テーマ投信に関しては、世界最大の株式市場の本拠地・米国の金融政策に大きく左右されます。
この筆者の考察をより確固としたものにするために、「ゼロ・コンタクト」「グローバルaiファンド」に続いてまたまたテーマ投信を取り上げたいと思います。
今回は2020年のパンデミックより注目度が大きく上がったサイバーセキュリティ領域のアクティブファンドである、「サイバーセキュリティ株式オープン」について解説します。
サイバーセキュリティ株式オープンの概要
サイバーセキュリティ株式オープンの概要は以下です。
ファンド概要
商品分類:
- 単位型・ 追加型:追加型
- 投資対象 地域:内外
- 投資対象資産 (収益の源泉):株式
属性区分:
- 投資対象資産:その他資産 (投資信託証券 (株式 一般))
- 決算頻度:年1回
- 投資対象地域:グローバル (含む日本)
- 投資形態:ファミリー ファンド
- 為替ヘッジ:なし
それぞれ特徴を見ていきましょう。
テーマ:サイバーセキュリティ
ここでいうサイバーセキュリティは、どのような意味となるのでしょうか?本来の意味は以下です。
サイバーセキュリティとは、デジタル化された情報の改ざんや漏えいを防ぐ手段のことです。
情報は常に信頼性が保たれていなければなりません。しかし、デジタル化された情報は簡単に持ち運べますし、ICTが普及した現代では遠隔地からの情報へのアクセスが可能です。デジタル情報は利便性が高いものですが、情報の正確性や信頼性が常に脅威にさらされている状態にもあります。サイバーセキュリティは、この脅威となる原因に対処する役割をもっているのです。
インターネットを活用して仕事するのはもう当たり前の時代ですから、サイバー攻撃には備える必要がありますよね。
大企業であればあるほど情報漏洩による事業へのインパクトは大きくなりますし、サイバーアタックなどを受けてしまえば国を揺るがす事態になってしまうでしょう。前者は情報セキュリティであり、厳密にはサイバーセキュリティとは異なります。
さて、サイバーセキュリティ株式オープンの場合は以下です。
サイバー攻撃に対するセキュリティ技術を有し、これを活用した製品・サービスを提供するテクノロジー関連の 企業等
サイバー攻撃に対抗するソフトウェアなどを展開しているのは米国ではクラウドストライク、マイクロソフトあたりが思い浮かびます。実際はどのようなポートフォリオになっているのかは、あとで追っていきたいと思います。
サイバーセキュリティ株式オープンの手数料
テーマ投信はアクティブ投信であり、常に指数をアウトパフォーむすることが求められます。
つまりは、多額の人件費、調査費などファンド運営費がかかります。それらを投資家で賄う必要があります。
購入手数料が3.3%(税込)、信託報酬が1.87%(税込)となっています。初年度は5%以上手数料がかかるので、リターンは最低でも6%以上ないと損失を抱えてしまいます。アクティブ投信は手数料が高いので、しっかりとパフォーマンスを発揮して欲しいところです。
為替ヘッジはあり?なしの方が良いのか?
為替に関しては、サイバーセキュリティ株式オープンに関しては主要銘柄がドルのため、米国FRBと日銀の動向を確認する必要があります。
2022年は急速に円安が進みましたので、サイバーセキュリティ株式オープンの暴落がかなり和らぎました。しかし、急速に進んだものは急速に戻るものです。
実際に一時は150円を超えましたが、今は130円まで戻っていますね。
円安が見込まれるのであれば、為替ヘッジは行ったほうが良いと思いますが、今後は円高に向かうかと思います。
なぜならばすでに米国はインフレ率が低下してきており、長期金利も下落を始めています。
また日本銀行もYCC解除の意向を匂わせています。
13日の金融市場では、日本の長期国債利回りが一段と上昇した。新発10年国債利回りは0.535%と2015年6月以来、7年7か月ぶりの水準に達した。これを受けて日本銀行は、午前の金融調節で、25年以下の臨時の長期国債買い入れと中期債を対象とする指値オペを通知した。同時に、10年国債を0.50%で無制限に買い入れる指値オペを通知した。
前日の米国では、12月の消費者物価の上昇率が一段と鈍化したことを受けて、米国の長期国債利回りは低下し、一時128円台まで円高ドル安が進んだ。そうした環境にも関わらず日本の長期国債利回りが逆に上昇したのは、日本銀行が昨年12月20日に続いて、来週17・18日の金融政策決定会合で、イールドカーブ・コントロール(YCC)の長期国債利回り変動幅の再拡大に踏み切るとの観測が強まっているからに他ならない。現状では、金融市場はその確率を半分程度織り込んでいるように見える。その可能性には注意をしておいた方が良いことは確かだろう。
米国のインフレ率が再燃するようであれば、また円安が進む可能性もなきにしもあらずですが、現在は非常に敏感な局面ですので、為替ヘッジありを選ぶのが成果になるのではないかと思います。
サイバーセキュリティ株式オープンの気になる利回り(パフォーマンス・運用実績)は?
それでは一番気になる過去の実績を見ていきましょう。
基準価額チャートの推移と運用利回り
以下はファンドの本来の実力が把握しやすい為替ヘッジありのチャートです。
2022年初頭から凄い速度で下落しています。基準価額はなんと一時は30,000円に突入するほどのバブル具合でした。
しかし今は15,000円台まで戻しています。それでもまだ設定来+57%程度なので、売っても利益は残ります。
ゼロ・コンタクトよりはるかにマシな結果になっていますが、それでも米国の金融引き締めをモロに受けて株式市場の下落に巻き込まれています。以下は直近のリターンです。数字でも確認しておきましょう。
1カ月 | 3カ月 | 6カ月 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) | 設定来 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
トータルリターン | -4.62% | -7.90% | -15.23% | -45.66% | 2.23% | 8.34% | -- | 57.61% |
テーマ投信の悪いところは、流行商品として流通させてたくさんの投資家を集めて損失を出させて手数料だけ貪っていく点です。
今回のサイバーセキュリティ株式オープンはまだまだ下落余地はあります。金融引き締めはまだまだ終わっておらず、またパンデミックによる巣篭もり需要はかつてほどないからです。
全てのテーマ投信が悪いとは言いませんが...日本の証券会社はゼロ・コンタクトのようなテーマ投信ならず、ナスダックをレバレッジさせるような商品など、とにかく投資家に優しくありません。
値下がりが止まらない元凶:サイバーセキュリティ株式オープンのポートフォリオ
2022年12月末のポートフォリオは以下の通りとなっています。マイクロソフト、クラウドストライクが入っています。
順位 | 銘柄 | 銘柄 | 通貨 | 業種 |
1 | マイクロソフト | アメリカ | 米ドル | ソフトウェア・サービス |
2 | パロアルネットワークス | アメリカ | 米ドル | ソフトウェア・サービス |
3 | ジェン・デジタル | アメリカ | 米ドル | ソフトウェア・サービス |
4 | データドッグ | アメリカ | 米ドル | ソフトウェア・サービス |
5 | ゼットスケーラー | アメリカ | 米ドル | ソフトウェア・サービス |
6 | サイバーアークソフトウェア | アメリカ | 米ドル | ソフトウェア・サービス |
7 | アリスタネットワークス | アメリカ | 米ドル | テクノロジ・ハードウェア・機器 |
8 | ノウビー4 | アメリカ | 米ドル | ソフトウェア・サービス |
9 | フォーティネット | アメリカ | 米ドル | ソフトウェア・サービス |
10 | クラウドストライクホールディングス | アメリカ | 米ドル | ソフトウェア・サービス |
かなり下落してしまった銘柄が含まれています。
過去のポートフォリオは以下の通りですが、内容は余り変わりません。株価変動で動きがあった程度でしょうか。テーマ投信なので、そこまで幅広い業種の銘柄は組み入れられませんので、当然ですね。
12月末 | 9月末 | 6月末 | |
1 | マイクロソフト | マイクロソフト | マイクロソフト |
2 | パロアルネットワークス | フォーティネット | クラウドストライク・ホールディングス |
3 | ジェン・デジタル | パロアルトネットワークス | パロアルトネットワークス |
4 | データドッグ | ゼットスケーラー | フォーティネット |
5 | ゼットスケーラー | クラウドストライク・ホールディングス | ノートンライフロック |
6 | サイバーアークソフトウェア | ノートンライフロック | アルファベット |
7 | アリスタネットワークス | アップル | データドッグ |
8 | ノウビー4 | データドッグ | アップル |
9 | フォーティネット | サイバーアーク・ソフトウェア | マイクロン・テクノロジー |
10 | クラウドストライクホールディングス | アリスタ・ネットワークス | ゼットスケーラー |
6月末時点ではアルファベットが入っているのは非常に意外でした。広告モデルの会社ですから、2022年以降、不況到来で大きく株価は下落するものと考えていましたが、想像以上に下落していきました。
すでに同業種のスナップチャットがひどい決算を出し、株価は連れ下げしています。まだ一段目の下げが終わったばかりで、株価は徐々に、さらに下落していくと筆者は考えています。
その意味では、パンデミックが終わりサイバーセキュリティ需要は続くも、以前ほどの加速はなく、また広告モデルの会社までポートフォリオ上位にいる状態は非常に健全ではなかったと言えます。現在は上位にいないので安心ですね。
掲示板での口コミ評判
以下はYahoo!ファイナンスの口コミです。我慢して上昇を期待している声が多そうです。
ナスダックが上昇していても、サイバーセキュリティは取り残されているという絶望の声が聞こえますね。また為替ヘッジなしのファンドは円安で誤魔化していた損失額が円高局面となった今、本来の損失が顕在化しています。
売り時・解約はいつ?今後の見通し
売り時は今でしょう。金融引き締めでボロボロにされるのはテーマ投信の宿命です。
テーマ投信とは本来、難易度の高い投資なのですが、どういうわけか「流行りに乗れ」と多くの投資家が軽はずみに投資をしてしまいます。そして損失を抱える人が後を絶ちません。
これは投資家が悪いというよりも、流行りの後半になってもまだ売れると算段を踏み、大々的な広告でテーマ投信を売って手数料で儲けている証券会社、金融機関に責任があると思われます。
さて、今後のサイバーセキュリティ株式オープンの見通しですが、今のインフレ率が6%、フェデラル・ファンドレートが4.50%です。
インフレは鈍化してきましたが、一気にテーマ株が上昇するには0.25%など低金利が必要ですので、しばらく時間がかかりそうですし、バブル銘柄群でしたので、今後もしばらくは上昇しない可能性もあります。
2020年以降に大きく上昇したテック株は、2000年のドットコムバブルと同様にもう二度と上昇することはないのかもしれません。過去にはシスコ、ゼロックスなど同じようにバブルで上昇した銘柄がありましたが、二度と株価は戻ってきませんでした。
テーマ投信とは、一生に一度しか輝くことがない、というのが大前提の商品なのです。一度跳ね上がったテーマ投信には手を出さない、もしくは早めに降りることを徹底しましょう。