普段はヘルスケアやテクノロジー銘柄に傾倒している筆者ですが、今回は少し毛色の異なる投資信託について分析したいと思います。
不動産、それもリートを取り扱う人気投信である「新光US-REITオープン(ゼウス投信)」について、今後の見通しを考えていきたいと思います。
新光US-REITオープン(ゼウス投信)の概要
新光US-REITオープン(ゼウス投信)の概要は以下です。
ファンド概要
商品分類:
- 単位型・ 追加型:追加型
- 投資対象 地域:海外
- 投資対象資産 (収益の源泉):不動産投信
属性区分:
- 投資対象資産:その他資産 (投資信託証券 )
- 決算頻度:年12回(毎月)
- 投資対象地域:北米
- 投資形態:ファンド・オブ・ファンズ
- 為替ヘッジ:なし
それぞれ特徴を見ていきましょう。
投資セクター:不動産
当然、リートで運用するファンドなのでセクターは不動産です。
US-REITに分散投資を行い、市場平均よりも高い水準の配当収益の確保 と長期的な値上がり益の獲得を目指した運用を行います。
REITとは、不動産投資信託証券のことです。
投資家から資金を集めて様々な不動産を所有・管理・運営する不 動産投資信託ならびに不動産投資法人が発行する証券の一般総称です。
REIT投資のアップサイドとダウンサイドは以下の通りです。
アップサイド:
- 高い配当利回り
- 少額から投資が可能(不動産を買うには本来まとまったお金が必要)
- 流動性(不動産売買は売却相手を見つけることへの手間がかかる)
- 不動産のプロに任せられる(自分で不動産物件を選ぶ必要がない)
- インフレに強い
ダウンサイド:
- 配当利回りの低下(不動産価格に連動)
- リート価格の下落(不動産市況低迷による投信価格の低下、キャピタルロスの可能性)
要するに不動産ですので、市況が大きくリターンに影響するということです。
長期で持つのもいいですが、最終的なリターンは株式と同等かそれ以下だと思います。
配当再投資をおこなっている内はほぼ間違いなく株式を下回ると思います。あとで触れますが、複利を活かせないからです。
ファンドの手数料はいくら?
リート投信はアクティブファンドと同様にファンドマネジャーの才覚と組織の調査力が求められますので、手数料は当然高めです。
購入手数料が3.3%(税込)、信託報酬が1.683%(税込)となっています。
初年度は4.683%の手数料がかかるので、リターンは最低でも5%以上ないと損失を抱えてしまいます。
アクティブ投信は手数料が高いので、しっかりとパフォーマンスを発揮して欲しいところです。
ゼウス投信の気になる運用実績は?
新光US-REITオープン(ゼウス投信)の過去の実績を見ていきましょう。
見てわかる通り、純資産は大きく落ち込み、基準価額は下落を続けています。
しかし、分配金再投資基準価額は上昇を続けています。そのままのことを言いましたが、一番価値を発揮しているであろう「分配金再投資基準価額」は幻です。
分配金を出している限りはあり得ない数字であり夢物語です。
実際に個人投資家が再投資型を選んでもキャピタルゲイン税(20.315%)を引かれた金額が再投資されます。
そのため、上記の「分配金再投資基準価額」のリターンにはなり得ません。
そして、そもそも「分配金再投資基準価額」のリターンですが、2004年9月から18年ほどの運用となっていますね。
この間のリターンは219%となっています。これは年率で考えると平均6.1%の年利回りです。
配当を出しているので、再投資する度にキャピタルゲイン税が引かれていますので、本来の平均年利回りは4%程度ではないでしょうか?
複利を活かせない運用とは貧弱なものです。
ゼウスの配当金は下がり続けている
そして配当金も減少傾向が続いています。
現在の月額の配当金は25円です。年額に直すと300円で、基準価額の2200円から考えると約13%となる。
しかし最初に基準価額が10,000円の時に投資した方からすると、投資額に対する配当利回りは3%程度ということになります。
長期投資をすればするほどゼウス投信の投資額に対する配当利回りは減少し続けています。
しかし、この配当金は一部は元本から払い出される特別配当金となっています。
つまり、元本から配当金が出ているということですね。手数料を支払って資金を引き出しているのと同じ状況です。
このようにリターン以上の配当金を出している企業は長期投資には向きません。
安定的にリターンをだせる長期投資向けのファンドについては以下でお伝えしていますのでご覧いただければと思います。
【2022年】日本国内のおすすめヘッジファンドを一覧にしてランキング形式で掲載!投資する際に気をつけたいポイントなど網羅的に解説。
ゼウス投信の組入銘柄とは?
このリターンを生み出しているポートフォリオ構成は以下の通りです。一応の確認です。
銘柄 | 業種 | 比率 | |
1 | アメリカン・タワー | インフラストラクチャー | 9.60% |
2 | プロロジス | 産業施設 | 7.90% |
3 | SBAコミュニュケーションズ | インフラストラクチャー | 7.60% |
4 | インビテーション・ホームズ | 住居 | 5.60% |
5 | ウェルタワー | 医療施設 | 5.50% |
6 | アバロンベイ・コミュニティーズ | 住居 | 5.40% |
7 | VICIプロパティーズ | 特殊施設 | 5.20% |
8 | エクイニクス | データセンター | 4.70% |
9 | UDR | 住居 | 4.30% |
10 | クラウン・キャッスル・インターナショナル | インフラストラクチャー | 3.90% |
ポートフォリオ1位のアメリカンタワーの株価推移は以下です。荒れ狂う米国市況、株式市場の割には堅調な方です。年初来マイナス5%程度です。
しかし、2位のプロロジスは散々たるものです。年初来でマイナス20%を超えています。
しかし、本格的な下落はこれからだと筆者は思います。最後の見通しでその理由を記載します。
フィデリティUSリートファンドとUSインデックスとリターンを比較
競合ファンドとインデックスファンドを比べてみたいと思います。
まずはインデックスです。赤がインデックスのeMAXIS Slim米国株式(S&P500)ですが、ボロ負けですね。
青:ゼウス投信
赤:eMAXIS 米国リートインデックス
緑:S&P500 (円建)
続いてフィデリティUSリートファンドとの比較ですが、こちらは50歩100歩でした。分配金を餌に投資家を集めてるファンドは同じようなものですね。
赤がフィデリティUSリートファンドです。ゼウス投信よりはフィデリティUSリートの方がましという結果になりました。
売り時や解約時期はいつ?今後の見通し
売り時は今だと思います。すでに少し遅いのですが、リート、つまり不動産を事業にしている場合、一番気にかけなければならないのは「金利」です。
不動産市況は金利が低ければ低いほど、不動産を購入する人が増えるので不動産価格が上昇し活況になります。これは誰にでも理解できると思います。
しかし、2022年現在FRBが金融引き締め、つまり利上げを行なっています。これは不動産価格が下がる未来が待っていることがわかります。
金利が上昇すると住宅ローン金利が上昇します。すると、今までの価格では売買が成立しなくなり不動産価格は下落していきます。
実際、2022年10月時点の30年固定ローンの金利は6.6%となっています。日本は1%台であることを考えると異常な水準であることがわかります。
今後、住宅市場は暴落していく未来が見えているのです。実際、以下のような記事もでています。
アメリカの不動産市場は、急上昇からようやく反落に転じつつあり、バブルの崩壊が近いのかもしれない。
セントルイス連銀のデータによると、住宅価格の中央値は2020年春から約33%急騰した。一つにはリモートで働く富裕層の働き手が小規模で比較的割安な都市圏に大量移住したことが要因だ。しかし、連邦準備制度理事会(FRB)が3月に利上げを開始して以来、不動産市場はすでに冷え込み始めているようだ。
つまりそういうことです。今リート投信を買おうと考えている投資家は、もう少し勉強と経験が必要でしょう。
企業はコスト高を背景に事業拡大計画を再検証しており、金利上昇が資金調達コストを押し上げ、需要を一段と弱めている。「民間不動産へのインフレ加速の影響は疑いようもない。買い手の層が細っている」と語った。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-06-14/RDGERNT0G1KW01
不動産セクターに投資をするタイミングは低金利、不況から好況に向かうタイミング一択です。
これはリート投信も同様の考えで問題ありません。