世の中には様々な投資信託が存在しています。
従来は日本の株や債券に投資するファンドが多くを占めていましたが投資の世界もグローバル化の波が押し寄せています。
本日は世界にバランスよく投資出来ると話題の世界経済インデックスファンドについて、詳しくみていきたいと思います。
世界経済インデックスファンドの概要
まずこの投資信託の概要をみていきましょう。
【設定日】2009年1月26日
【運用会社】三井住友トラスト・アセットマネジメント
【投資先】全世界の株式並びに債券 (後で詳述します)
【分配金】都度月ごとに設定(直近は0)
【手数料】購入手数料 3.24% 信託手数料 0.54%
投資先については詳しく見ていきますが、まず手数料について見ていきましょう。信託手数料は各指数を組み合わせて組成している投資信託ということもあり、低く抑えられており長期投資に適している水準といえるでしょう。
また分配金についてです。
日本人は基本的にお小遣いが入ってくるのが好きなので、分配金を選好する傾向にあります。しかし、分配金を再投資する方が長期的には投資家にとってプラスのリターンをもたらします。
現在の世界経済インデックスファンドの分配金を出さないという方針は好ましいでしょう。(以前は分配金を出していた形跡がありますが)
世界経済インデックスファンドの資産別投資割合
まずは債券と株式の投資割合についてです。世界経済インデックスファンドでは株式と債券の割合を50対50に設定しています。
この割合については株式投資の王様であるウォーレン・バフェット氏の師であるベンジャミン・グレアム氏が推奨している比率でもあります。バランスの取れた割合ということが出来るでしょう。
➡︎ 本当の意味でバリュー株投資を実践する投資信託は存在しない?バリュー株投資を謳う投信がおすすめできない理由をわかりやすく解説する。
また、同様に世界の資産に投資しているセゾン投信の「セゾン・バンガードグローバルバランスファンド」も同様に株式と債券の投資比率を半々に設定しています。
世界経済インデックスファンドの国別投資先
まず投資先の割合を見る前に現在の世界のGDPの新興国と先進国の割についてご覧ください。
GDPシェア | |
米国 | 24% |
日本 | 6% |
他の先進国 | 33% |
新興国 | 37% |
一方株式市場の時価総額のシェアは以下のようになっています。GDP比率に対して新興国が過小評価されています。
GDPシェア | |
米国 | 58.8% |
日本 | 6.4% |
他の先進国 | 21.0% |
新興国 | 13.8% |
然し、現状は若干過大評価気味とはいえ世界に時価総額の半分以上が米国というのは驚きですね。
それでは世界経済インデックスファンドの構成はどうなっているかというと以下のようになっております。
世界経済インデックスファンド 時価総額シェア |
|
米国 | 36.7% |
日本 | 9.7% |
他の先進国 | 25.0% |
新興国 | 28.6% |
完全にGDP比と一致しているわけではありいませんが、より実体経済の割合と整合した形での比率にしていることがわかります。
この為、より世界経済の成長の恩恵をダイレクトに反映しやすいファンドとなっているわけです。
世界経済インデックスファンドの運用成績
次に重要な運用成績についてです。
リーマンショック後は堅調も近年は停滞
先進国株、先進国債権、新興国株、新興国債券とバランスよく分散していることにより、リーマンショック後の世界経済の立ち直りを見事に再現しています。
丁度この間も2011年度の停滞期、2014年からのチャイナショックや資源価格下落による新興国の不振の影響を反映しています。
世界経済の温度をダイレクトに反映している投資信託であるといえますね。コロナショックからも比較的ボラティリティ低く回復しています。
セゾンバンガード・グローバルバランスファンドと比較
それでは世界経済インデックスファンドと同様に世界の株と債券に50%ずつ投資しているセゾンバンガード・グローバルバランスファンドと比較してみます。
青:世界経済インデックスファンド
赤:セゾンバンガード・グローバルバランスファンド
上記は設定来の成績ですが、セゾンバンガード・グローバルバランスファンドがアウトパフォームしています。
株で世界分散をするよりも、債券も半分持った方が良いという状況となっています。
株式に投資するのは賛成ですが、とあることをしていることによって世界経済インデックスファンドは債券を混ぜた投信に負けています。
理由は後続に続きます。
世界経済インデックスファンドの欠点
ここまで見てきて安定投資型の長期投資向きの投資信託であるということは言えますが、一つ欠点があります。
まず各資産の連動目標としているインデックスをご覧ください。
全体の50%×30%=15%をしめる新興国株式が連動目標としているのがMSCI エマージング・マーケット・インデックスというのは見逃せない点です。
これは新興国の株式市場の時価総額比で国を決定している為、現在の構成国は以下のようになっております。
(以下は同じくMSCI エマージング・マーケット・インデックスを連動目標としているVWOの国別構成を参考にしています)
新興国時価総額シェア | |
中国 | 36.8% |
台湾 | 18.2% |
インド | 14.5% |
ブラジル | 6.0% |
南アフリカ | 3.9% |
サウジ | 3.6% |
ロシア | 3.1% |
タイ | 2.5% |
メキシコ | 2.3% |
マレーシア | 2.0% |
その他 | 7.1% |
時価総額比としてしまった結果、現在高成長を終えて低成長となっている韓国・台湾や、今後失速が予測される中国という東アジアの三か国で60%を占めているのです。
更にブラジル、ロシアといった今後大きな成長が見込みにくくなっている国を含めると70%を超えてきます。
本当に魅力的な成長が見込まれる新興国に投資することができないのです。
この点については、注意した方が良いといえるでしょう。
総評と欠点
これまで見てきたように、世界経済インデックスファンドはパッシブファンドとして世界経済の成長をダイレクトに享受できる配分で投資をしています。
年間の運用手数料も低いこともあり長期投資には適している投資信託ということが出来ます。
実際私が所属していた総合商社での確定拠出年金でもこの投資信託は組み込まれており、
他の選択肢が微妙であったこともあり私は100%この投資信託に配分しておりました。
然し、細部を見てみると新興国株式の分野がMSCI エマージング・マーケット・インデックスを参照している為に、
成長が鈍化している国の構成が大きく、今後の魅力的な新興国の経済成長を享受することが出来ません。