農林中金は農家専門の銀行というように思われていますが、実態は大きくことなります。
農林中金は集めた資金を世界のあらゆる市場で分散投資をしている機関投資家としての側面を強く有しています。
農林中金の運用資産は実に62兆円に及び、GPIFとまではいいませんが国内最大規模の機関投資家となっています。
そんな農林中金の関連会社である農林中金全共連アセットマネジメントが運用しているファンドが農林中金<パートナーズ>長期厳選投資「おおぶね」です。
あまりにも名前が長いので以下では「おおぶね」とします。
今回は「おおぶね」について紐解いていきたいと思います。
「おおぶね」はどんな投資信託?
まずは「おおぶね」がどのような投資信託なのかみていきましょう。
長期投資ができる銘柄を選定
「おおぶね」が投資対象とする銘柄は以下です。
付加価値の高い産業 | 商品・サービスの提供を通じて様々な問題を解決することで高い収益をあげている産業 |
圧倒的な競争優位性 | 高い技術や独自のサービスを通じて他者が真似できないビジネスを展開している |
長期的な潮流 | 高齢化や環境問題など社会の変化に伴う市場拡大が期待できる |
まあ、このような銘柄がしっかりと選べれば苦労しないわけですがね。
投資対象は米国銘柄
「おおぶね」が投資対象とするのは日本株ではありません。世界経済を索引している米国株式です。
米国株式ですので米ドル建になりますので為替リスクをおうことになりますが、原則為替ヘッジはしない方針としています。
「おおぶね」の構成上位銘柄
「おおぶね」の構成上位銘柄が以下となります。上位10銘柄で55.4%となります。
銘柄 | 業種 | 構成比率 |
Walt Disney | コミュニケーション サービス |
8.2% |
VISA | 情報技術 | 6.8% |
TEXAS INSTRUMENTS | 情報技術 | 6.2% |
CLOROX | 生活必需品 | 4.5% |
COLGATE PALMOLIVE |
生活必需品 | 4.5% |
CHURCH & DWIGHT |
生活必需品 | 4.5% |
MCCORWICK | 生活必需品 | 4.4% |
NIKE | 一般消費財 | 4.4% |
COSTCO | 生活必需品 | 4.4% |
SHERWIN WILLIAMS |
素材 | 4.3% |
参照:月次報告書
米国市場を先導しているのはGAFAをはじめとしたハイテク企業ですが、ハイテク銘柄の比率が非常に低くなっています。
G:Google
A:Apple
F:Facebook
A:Amazon
伝統的な銘柄に集中投資しているということが言えますね。
産業別の構成比率は伝統銘柄に大きな配分となっている
より詳しくポートフォリオの中身を見ていきましょう。
以下は「おおぶね」のセクター別の構成比率とS&P500の構成比率を比較したものです。
おおぶね 構成比率 |
S&P500 構成比率 |
|
資本財 | 24.0% | 8.30% |
生活必需品 | 20.00% | 7.00% |
情報技術 | 17.90% | 28.20% |
ヘルスケア | 12.50% | 14.20% |
一般消費財 | 7.70% | 2.60% |
素材 | 6.80% | 10.80% |
一般消費財 | 4.40% | 11.60% |
コミュニケーションサービス | 6.6% | 9.70% |
金融 | 4.4% | 3.00% |
不動産 | ー | 2.60% |
エネルギー | ー | 2.00% |
S&P500指数で多くの比率をしめている情報技術、コミュニケーションセクターや一般消費財でアンダーウェイトとなっています。
情報技術:マイクロソフト、アップルを含む
コミュニケーションセクター:FB、Googleを含む
一般消費財:アマゾンを含む
その代わり伝統銘柄が多く存在する資本財や生活必需品の比率が高くなっています。
比較的低い「おおぶね」の手数料
「おおぶね」はアクティブ型の投信の中では比較的低い手数料体系となっています。
購入手数料:2.2%(税込)
信託手数料:年間0.99%(税込)
購入手数料が3%、信託手数料が2%というファンドが多い中で比較的低い手数料で運用されているということができますね。
気になる「おおぶね」の運用成績とは?
では肝心の「おおぶね」の成績について見ていきましょう。
3年で基準価格は1.5倍になっている
以下は「おおぶね」が設定開始された2017年7月からの基準価格の推移です。3年間で1.5倍となっています。
3年で1.5倍となっていれば素晴らしい成績のように思えますが、単体の成績だけでみるのは不十分です。
米国株に投資しているので米国株指数と比較していきましょう。
ナスダックには劣後するもS&P500指数をアウトパフォーム
以下は「おおぶね」と3つの代表的な米国株指数を比較したものです。
青:おおぶね
黄:S&P500
赤:ダウ平均株価
緑:ナスダック
【S&P500】
S&P社が選定した米国を代表する約500銘柄の時価総額加重平均指数。近年ハイテク銘柄の台頭によってハイテクの比率が上がってきている
【ダウ平均株価】
正式名称はダウ工業株30種。経済紙のウォールストリートジャーナルを発行しているダウ・ジョーンズ社がが米国を代表する30銘柄の平均株価指数です。日本でいう日経平均株価のさらに銘柄を絞ったバージョンです。ハイテク比率が一番低くなっています。
【ナスダック総合指数】
米国の新興国企業が多く上場しているナスダック市場に上場している企業の時価総額加重平均指数です。ハイテク比率が最も高くなっています。
「おおぶね」は最も代表的な指数であるS&P500指数を凌駕しているものの、殆ど同様の成績になっています。
また、ポートフォリオのハイテク比率が低いためナスダック総合指数に対しては大幅にアンダーパフォームしています。
「おおぶね」はアクティブ型の投資信託として面目を果たしているものの、非常に優れたファンドとまではいえない結果となっています。
特に相場が下落する局面で同様に暴落を被っています。
大きな資産を投資していたら安心することはできませんね。
以下、筆者が投資しているファンドを含めて暴落局面で資産をしっかり守りながら着実にリターンを挙げているファンドを中心にお伝えしていますので参考にして頂ければと思います。
現在米国はコロナショックを経て経済は不調であるにも関わらず株価は上昇し割高となっています。
急な下落が起こりうることを考えると、ここから投資するのは危険と考えています。
まとめ
農林中金の関連会社が運用する「おおぶね」は米国株に投資をしているアクティブ型の投資信託です。
ポートフォリオは伝統的な銘柄が多く、勢いのあるハイテク比率は低くなっています。
ただ、S&P500指数にはわずかに優っているものの、暴落耐性が低いというデメリットがあります。
安定して資産を形成するためには暴落を免れながら安定したリターンを積み重ねていくことが肝要となります。
以下で筆者の目線でおすすめできるファンドについてランキング形式でまとめていますので参考にしていただければと思います。