今回取り上げるのは人気の高いソフトバンクグループです。
人気の理由は国内で取引できる債券が殆ど存在しないからです。定期的に発行されているのは先日取り上げた楽天グループの社債とソフトバンク社債くらいです。
関連:評判だけど危ない?経営リスクが高まる楽天グループが発行する楽天カードマン債やドル建社債のリスクや危険性を徹底評価!
米国では個人での債券投資も活発で取引できる社債が数多く用意されています。
米国では社債の発行残高は右肩上がりに上昇していますが、日本では社債は殆ど発行高が増えていないのです。
米国の社債は為替変動リスクを負うことになるので、為替リスクがない日本企業の社債はわかりやすく人気が高いのです。
前回分析した楽天グループの社債は経営環境が悪くリスクが高いとお伝えしました。
では、今回分析するソフトバンクグループの社債はいかがでしょうか?
詳しく分析していきたいと思います。
ソフトバンクグループ(9984)はソフトバンク(9434)とは別物
まず、皆さん勘違いしていると思うので最初に明らかにしておきたい事実があります。
皆さんがソフトバンクと聞いて思い浮かぶのは通信会社のソフトバンクではないでしょうか。
しかし、社債を発行しているのはソフトバンクグループです。
ソフトバンクグループは通信会社ではなく、孫正義氏が運営するベンチャーキャピタルファンドです。
アリババやソフトバンクビジョンファンドを通して世界中のベンチャー企業に投資しています。
ベンチャー投資は失敗すると全損する可能性があります。つまり、非常にリスクの高い投資なのです。
この点については追って詳しくお伝えします。
ソフトバンクグループの社債(=劣後債)の概要
まずは、ソフトバンクグループの社債の概要は以下となります。
商品名 | ソフトバンクグループ株式会社 第58買い無担保社債 |
愛称 | 福岡ソフトバンクホークスボンド |
発光体 | ソフトバンクグループ株式会社 |
期間 | 約7年 |
利率 | (税引前)年率2.84% (税引後)年率2.263% |
申し込み単位 | 100万円以上、100万円単位 |
発行価格・償還価格 | 額面金額の100% |
発行日 | 2022/12/16 |
満期償還日 | 2029/12/14 |
発行額 | 3850億円 |
税引後で年率2.263%の利息は単利です。毎年額面に対して2.263%の利息を受け取るということですね。
100万円投資したら毎年2万2630円を利息として受け取ることができるということですね。
発行価格と償還価格が額面価格の100万円という点について疑問に思われた方もいらっしゃると思います。
発行価格というのは発行した時の価格です。額面100万円の社債が額面100万円で販売されるとは限りません。
102万円で発行されて償還する時に100万円で売却となることもあるのです。
発行価格と償還価格が同じく額面の100%ということは、発行した価格と同じ価格で償還時に売却することができるということですね。
ソフトバンクグループ社債のリスクとは?
では、どのようなリスクがあるのでしょうか?
途中売却のリスク①:流動性リスク
社債として運用している資金を途中で売却したい方もいらっしゃると思います。
売買というのは買いたい人と売りたい人が存在することで成立します。
通常の環境であれば、買いたい人はいるので売買は成立します。
しかし、ソッフトバンクグループの経営危機が取りざたされるようになると売りたい人ばかりとなり売買が成立しない可能性もあります。
途中売却のリスク②:元本割れのリスク
また、途中で売却できたとした場合は時価での売却となります。
つまり、100万円で購入したとしても100万円で売却できるというわけではないのです。
社債価格というのは金利が上昇したり、信用力が低下した時には価格が下落します。
現在よりも日本国債の金利が上昇したり、信用力を表す格付けが低下した場合は社債価格は下落します。
あくまで7年間満期まで保有した時に元本が保証されている投資ということになります。
倒産で全損となるリスク
最も恐るべきリスクはソグロバンクグループの倒産チスクです。
企業が倒産する場合、まず倒産するまえに取引先や従業員に支払いを実行し、倒産となった時にはまず銀行借り入れを返済します。
銀行借り入れを返済したあとに残った金額で社債投資家に資金を戻していきます。
しかし、冷静に考えてください。倒産するような企業は取引先の支払いも滞るような状態の企業ばかりです。
銀行に返済をしたら基本は資金が残らないと考えるのが自然です。
ソフトバンクグループが行なっているのはベンチャー企業への投資です。
投資している企業が倒産したり、株価が暴落すると当然ソフトバンクグループ自体の経営も悪化します。
次の項目ではソフトバンクグループの経営が安泰なのかという点について決算資料を紐解きながらお伝えしていきたいと思います。
ソフトバンクグループの経営状態は危険なのか?
ではソフトバンクグループの経営状況について見ていきたいと思います。
業績は明らかに悪化している
純利益は直近四半期は3兆円の利益となっています。
一見すると素晴らしいように思えますが、これは昔から投資しているアリババ関連取引によるもので過去の遺産を取り崩した結果です。
以下、アリババ関連利益はテクニカルなもので、本質的な利益とは異なります。会社関連区分を変えただけで会計上作り出された幻の利益です。
アリババ関連利益を除外すれば2022年2Qも2兆円近い純損失を出していることになります。
そして基調としては2021年4Q、2022年1Qの合計で5兆2000億円の巨額損失をだしています。
そして、この原因は改善しているどころか悪化し続けています。理由はソフトバンクビジョンファンドの失墜です。
肝入りで始めたソフトバンクビジョンファンドの累積投資損益はマイナスに転落しています。
つまり、元本割れしているということですね。金利を支払って借り入れた資金で投資して投資損益がマイナスになっているのでソフトバンクグループの財務を痛めています。
このままソフトバンクビジョンファンドの評価額が落ち続ければ、巨額損失を負うことになります。
ではそうなった時に財務的には大丈夫なのかという点について次の項目から紐解いていきます。
バランスシートは直近は問題なきも数年後は安泰とはいえない
まずは資産を見ていきましょう。画像で見た後にわかりやすくまとめます。
負債については以下となります。
わかりやすくまとめると以下となります。
現金及び同等物 | 5兆9000億円 | 有利子負債(流動) | 4兆4000億円 |
その他流動資産 | 4兆3000億円 | 有利子負債(固定) | 14兆6000億円 |
流動資産合計 | 10兆2000億円 | その他負債 | 13兆7000億円 |
ビジョンファンド | 12兆7000億円 | 負債合計 | 32兆7000億円 |
投資有価証券 | 7兆4000億円 | ||
その他固定資産 | 15兆9000億円 | ||
固定資産合計 | 36兆000億円 | 純資産合計 | 13兆5000億円 |
現在の現金5兆9000億円は有利子負債(流動資産)の4兆4000億円を上回っているので1年以内の倒産はありません。
しかし、有利子負債(固定)は14兆6000億円も存在しています。
この資金を返済するためには投資している資産の値上がりなどがないと厳しい状態となっています。
その他固定資産には無形資産と「のれん」という実態のないものが7兆8000億円が含まれています。
実際には残り6兆円たらずで債務超過となるといっても過言ではありません。
そして現在ビジョンファンドは12兆7000円分ありますが、このまま評価額が半減してしまうと実質的に債務超過に陥る状態となります。
その状況となった時には他の投資している投資有価証券も7兆4000億円も大きく下落するので更に厳しい状態となります。
今後、数年という目線でみた場合に債務超過に陥る可能性は否定できません。
今後成長株はしばらく厳しい環境が想定される
ソフトバンクの経営の安全性で重要なの投資している銘柄の今後となります。
上場企業以外に多く投資しているので即座に損切りなどは出来ません。これが非上場株式への投資の難しいところです。
ソフトバンクグループはユニコーンといわれるような非上場なるも評価額が高い銘柄が多くなっています。
ユニコーン企業とは?
- 評価額が10億ドルを超える
- 設立10年以内の未上場のベンチャー企業
いわゆるグロース企業よりも、更に成長力を担保に価値の評価が行われる企業群となります。
これらの企業の中には利益が全く出ていないにも関わらず高い評価がついてしまっている企業が数多く存在します。
2010年代の金融緩和で市場でだぶついた資金が投機的に流れ込み実態とはかけ離れた金額がついてしまっているのです。
その高値を掴んでいるのが残念ながらソフトバンクグループです。
ソフトバンクグループは自らユニコーン企業のバブルを作り出して高値で掴んできたという側面があります。
市場に資金が余っている局面では、このような法外な評価も正当化されてきました。
しかし、2022年に入って状況は一変しています。
2021年後半から世界中でインフレが発生していることで欧米の中央銀行は金融引き締めを行いばら撒いた「お金」を市場から回収しています。
すると、今まで上昇してきた投機的な仮想通貨やNFTやグロース企業やユニコーン企業の価値が暴落していきました。
今まで蜃気楼的に積み上げられた価値が実態に戻り始めているということですね。
2022年12月現在、この流れはまだまだ継続しています。理由はインフレがまだまだ全然おさまっていないからです。
残念ながら2023年になると、現在の金融引き締めに加えて大不況が到来します。
高止まりするインフレと上昇する金利に世界経済が耐えられないからです。
大不況が訪れると企業の売上や利益も下落するので更にユニコーン企業の価値も暴落していきます。
ここからが本番なのです。
ここからの暴落次第ではソフトバンクグループが債務超過に陥る可能性も否定できません。
2023年を乗り切れるかは注目していく必要があります。
ソフトバンクグルーブ社債への投資はリスクリターンが見合っているのか?
投資をする際にはリターンだけでなくリスクも考えないといけません。
わずか年率2%程度のリターンを狙うために、ソフトバンクグループの今後の経営リスクをとるのは割りに合わないと筆者は考えています。
来年、ユニコーン市場が暴落すれば、最悪社債が紙切れになる可能性もあるからです。
倒産となってしまえば元本全額が損失となってしまいます。
リスクとリターンが見合っていないのです。
筆者はどのような環境でも安定してリターンが狙えるヘッジファンドに投資をして資産形成を行なっています。
以下で詳しくお伝えしていますのでご覧いただければと思います。