今回は著名なヘッジファンドの中でも、運用額は1600億ドル(約17兆円)と世界最大のブリッジ・ウォーター・アソシエイツ社の創業者のレイ・ダリオ氏を取り上げます。
レイダリオ氏がどんな人物なのか?
投資哲学はどのようなものなのか?
彼がファンドマネージャーのブリッジウォーターはどのようなヘッジファンドなのか?
という点を中心に特集していきたいと思います。
レイ・ダリオのブリッジ・ウォーター・アソシエイツは経済学を駆使して運用を行う王道のヘッジファンドです。
数学を中心とした経済学以外の知識を用いて運用を行うジェームズ・シモンズのルネッサンス・テクノロジーズとは大きく異なります。
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レイ・ダリオの生い立ちと経歴
まず彼の生い立ちと経歴から見てみましょう。この顔をみたら分かると思うのですが、正に聡明な尊顔をされてますが、見た目通りのリート街道を歩んできました。
彼はニューヨークのクイーンズ区のジャズミュージシャンの父と専業主婦の母の間に生まれました。
クイーンズ区はニューヨークの中でもマンハッタンとは異なり、比較的貧しい地区でトランプ大統領と同じ地区の出身となります。
トランプ大統領が中間層からの支持を集めているのはこの地区出身ということも寄与しているらしく、特別裕福な家庭に生まれたわけではないことが分かります。
彼が投資を始めたのは12歳の時で、アルバイトで稼いだ300USDでノースイースト空港の株を買い数年後に3倍になったそうです。
なんだかウォレン・バフェットと似たエピソードですね。
村上ファンドの村上氏も小学生の時から親から株式口座を与えられトレーディングをしていたという話も残っています。
投資で成功する人の共通項として幼少期から投資に興味を持ち携わっているということがいえそうです。
私も息子が小学校にあがったら株式口座を与えるつもりです。
その後はロングアイランド大学を卒業後、日本人が憧れてやまないハーバード・ビジネス・スクールで博士号を取得しております。
現在でもブリッジ・ウォーター・アソシエイツ社ではハーバードMBAホルダーが中心で構成されております。
エリート・オブ・エリート集団ということができるでしょう。
ハーバード大学MBAを卒業後大手メリルリンチ銀行に就職、その後シェアソン・ヘイデン・ストーンという証券会社に入るのですが同社を解雇されてしまいます。
解雇となった理由がクライアントへのプレゼンで、ストリッパーを呼んだことが原因だったみたいです。非常に破天荒の人物であることが分かります。
そして現在のブリッジ・ウォーター・アソシエイツ社を26歳の時に立ち上げました。私よりも6つも年下の時代にファンドを立ち上げるなんて凄い才能だと思います。
そして現在69歳と著名投資家の中ではまだ若手といった年齢で、現在の地位を築いているのですから素晴らしいです。
バフェットは現在89歳ですが、彼の99%の資産は60歳以降にきずいたものです。複利効果の偉大さを物語っていますね。
レイ・ダリオの人柄とブリッジ・ウォーターの企業文化
レイ・ダリオの人柄は偉大なCEOの中では一風変わっていて、歯向かってくる従業員を評価するという性格みたいです。
日本企業の経営者又は上司とは少なくとも違いますね。
一つ、ブリッジ・ウォーター社の食堂のグリーンピースの話があります。
2005年に同社の若手社員ホールデン・カーノフスキーが社内のメッセージボードに、食堂のメニューがひどく、特にグリンピースの味が我慢ならないという内容の不満を書きました。
当時のCOO(最高執行責任者)のホープ・ウッドハウスは「馬鹿げたことだ、取るに足らない」と一笑にふしましたが、CEOのダリオ氏は真剣に取り合って問題を改善することを決定したといいます。
彼は「ブリッジ・ウォーター社には小さい問題などはない」というのが持論なのです。その後、食堂の質は格段に改善されたみたいです。
皆さんの会社で社長が食堂の一商品に関わってくるようなCEOはいますでしょうか??かなり特異な人物であるといえそうですね。
また彼は「超越瞑想」を長年行っており、瞑想中にひらめいた自己実現の方法を企業文化として浸透させてきました。
超越瞑想のパイオニアのデヴィッド・リンチを招いて社員向けに超越瞑想のセミナーを開いたこともあるそうです。
またブリッジ・ウォーター・アソシエイツでは「透明性の確保」を企業文化としており、
社内のイントラでは「失敗したトレーディングの案件」から「最近の食生活」のような些細なものまで投稿されます。
解決の必要性があるものについては、マネージャーが解決法について投稿した社員に指導するということを行っており、
社内の透明性図書館に解決策と共にアップされ誰でも閲覧できるようになっているのです。
またレイ・ダリオ氏の人生や仕事に関する哲学を纏めた「原則」という110ページに上るものが社員に配られ、全員が熱心に熟読しているみたいです。
彼は社員管理も経済のよに、一定のパターンを当てはめることが出来ると考えているのです。
この原則は前半部分は「基本的な人生の原則」という彼の成長の軌跡を描いた自伝のような内容になっており、
会社のルールに従う重要さ、失敗から学ぶことのような精神論的な部分が記載されています。ストリップの話も書かれているのでしょう。
後半部分は「経営原則」で彼による250以上の職場のルールが記載されています。
「生産的な会議をしろ」であったり「ロジカルに話せ」であったり「部下を指導するには、機械を操作するようにしろ」といった過激なものも含まれている。
同社に入社するのは超エリートだけであり、非常に狭き門ですが、彼自身と同様に特異な同社に肌が合わない又は解雇され30%が2年以内に同社をさるらしいです。
外資系企業のイメージとぴったりですね。
ブリッジ・ウォーター・アソシエイツの戦略
レイ・ダリオ氏のポートフォリオの特徴は「最小リスクで最大の利回りを目指す」という投資家にとって理想的なものです。
実際、リーマンショック時もプラスで乗り切っています。この下落リスクの引きさから米国最大の年金基金であるCalPERSも同社に資産を預けています。
ブリッジ・ウォーターの投資戦略は、アルファ戦略に拠っています。
アルファ戦略とは市場全体の動きと乖離したリターンを追求する戦略です。(市場全体の動きに連動したリターンをベータといいます。)
日本の市場でいえば、日経平均の利回りに完全に連動したものをベータということが出来ます。
アルファとベータの関係について図示すると以下のようになります。
つまりアルファ戦略というのは市場平均に対してどれだけアウトパフォームできるかということですね。
例にとると例えばリーマンショックの時に市場平均の例えばS&P500が50%のマイナスを記録したとすると、彼がファンドのリターン10%出したのでαは10-(-50)=60%ということになるのです。
アルファこそヘッジファンドのマネージャーの腕が試されているところなのです。レイ・ダリオ氏曰くαがでてないのであれば、ファンドの存在意義がないとまで言っています。
まあ、これはよく考えると当たり前のことですよね。
αを求めないのであれば、市場平均に連動するETFを購入しておけばいいのですからね。
「世界のエリート投資家は何を考えているのか」から見える投資哲学
彼はアンソニー・ロビンズの「世界のエリート投資家は何をかんがえているのか」のインタビューに答えています。
そこから彼の投資に対する考え方について抽出したものを参考までに書きます。
著者が「最小限のリスクで最大の利回りをえる」資産配分を作る原則について質問したところ、彼は以下のように答えました。
ほとんどのポートフォリオの特徴
「各ファンドや個人のポートフォリオは好況時には利益がでるが、不況時に損失がでる仕組みとなっている。」
要は、ほとんどベータと変わらない、つまり市場平均と変わらないということが言いたいわけです。
相関性の低い投資商品
「歴史的に見れば、ほとんどの投資商品は無作為に動き、相関が低い。」
通常は逆方向に動く債券と株がリーマンショック時に同じく下落したことなどを例に挙げています。
また、どのような投資商品も環境が整えば莫大な利益を生むとしています。
環境に応じて利益を出す商品も組み入れていれば、どのような環境でも安定した利回りを出すことが出来るとしております。
オールウェザー(全天候型)・ポートフォリオ
では先程のべた環境というのは大きく分けて以下の四つしかないとしており、どの順番でくるかは不明としています。
この四つのそれぞれの季節に利益が出るリスクが同量の4つのポートフォリオを組み合わせることにより、どのような経済環境からも守ることが出来るとしています。
このポートフォリオをオール・ウェザー型ポートフォリオと命名しています。
重要なのはリスク量を同じにするということですね、例えば株式と債券は同量もつとリスク量が株式が債券の3倍なので、一緒にならないということですね。
オール・シーズンズ・ポートフォリオ
レイ・ダリオはレバレッジを使いながら、上記の全天候型ポートフォリオを組成する為、個人には組成は不可能としていますが、
個人でもできる疑似全天候型のポートフォリオを訪ねたところ彼は以下のようなポートフォリオをオール・シーズン・ポートフォリオとして個人投資家に推奨しました。
資産 | 比率 |
米国株 | 30% |
長期国債 | 40% |
中期国債 | 15% |
金 | 7.5% |
商品 | 7.5% |
リスク量が株式が債券の3倍なので、債券の比重が55%と非常に高いですね。
そしてインフレ加速時に備えて金と商品を適度に組み入れているというポートフォリオです。
下の項を見て頂ければわかるのですが、このような趣向である為好況時の成績は芳しくない成績で、不況時に強いポートフォリオになっています。
ブリッジ・ウォーターの投資先
ブリッジ・ウォーターの1991年からの運用成績は以下のようになっております。大きな下落をさけながら右肩あがりで上昇しています。
下落相場でも利益をだして安定的にリターンをだすヘッジファンドの特徴を見事に満たした値動きとなっています。
世界最大のヘッジファンドということで、非公開株などの普通の人が投資できないような特殊な投資先に投資しているように思われます。
しかし、ブリッジ・ウォーターの投資先は個別株やETFへの投資となっています。
以下2022年6月時点での上位10銘柄をご覧ください。
上位10銘柄の中の1位とVWOと3位EEMと4位IEMGと6位EWZという新興国投資だけで全ポートフォリオの11.3%を占めていますね。
その他はコカコーラ(KO)、P&G(PG)、Pepsico(PEP)、Costco(COST)などのディフェンシブ銘柄が多く組み入れられています。
個人投資家が投資できるヘッジファンドはあるのか?
ブリッジウォーターアソシエイツのようなヘッジファンドへ、日本から個人の投資家が投資することは可能なのでしょうか?
同社のようなファンドは個人での投資は困難です。
実際、ブリッジウォーターの旗艦ファンドであるピュアアルファの最低出資額は1000億円となります。機関投資家に向けてのみ門戸を開いているということですね。
しかし、ブリッジウォーターと同様のリターン優良なヘッジファンドで個人が投資できるものは存在します。
例えば筆者が投資をしているBMキャピタルが該当します。BMキャピタルは運用開始以降10年間1度も損失を出さず、年率10%以上の平均リターンをだしています。
投資信託といった商品とは違い、ヘッジファンドは預け入れ最低金額(低くても1,000万円以上等)や、ロックアップ期間(3ヶ月〜1年等々)といった投資にあたってのハードルがあります。
しかしこれらをクリアできる投資家にとっては非常に魅力的な選択となってくるでしょう。
詳しくは以下を参照下さい。
まとめ
レイ・ダリオ氏は元々富豪というわけでもなく、ハーバードのMBA取得後Wall街の経験を積んだ絵にかいたようなエリートで若くしてブリッジ・ウォーター社を設立しました。
彼の投資手法はリスク量を加味してポートフォリオを組成している為、好況時には芳しくないものの不況時の安全性が高い運用手法であるといえます
彼のファンドの安全性が高い為、資産運用に適していますが、個人が投資するには富裕層となりプライベートバンカーからの紹介が必要でなかなか手の届かない商品になっています。
ただし、彼のファンドと同じく下落リスクを著しく低く抑え10%程度の平均利回りを出し続けているファンドは日本にもあります。
ヘッジファンドを含めた様々な投資ファンドのランキングが知りたいという方は以下を参考にしてみて下さい。