皆さん一度は高配当銘柄ランキングを調べたことがあるかと思います。
2023年1月時点では高配当利回りTop10は以下の通りの順位となっています。
配当利回り | |
商船三井 | 17.37% |
日本郵船 | 16.77% |
ユナイテッド海運 | 8.93% |
乾汽船 | 8.80% |
三井松島HD | 8.38% |
川崎汽船 | 7.49% |
西松建設 | 7.02% |
JT | 7.02% |
石油資源 | 7.00% |
ミズホメディ | 6.75% |
参照:2023年1月27日時点
上位10銘柄のうち5銘柄が海運企業となっています。海運企業は配当利回りだけでなく株価も急騰しています。日本郵船については別記事でお伝えしています。
- 【なぜ高い】日本郵船の配当利回りはなぜ異常値なのか?今後の見通しは不況到来・需要悪化で株価は急落?
- 【どうなる】今後は危ないと言われる川崎汽船(9107)の株価見通しは?人気高配当・高利回り銘柄を分析!
本日は海運の代表企業である商船三井を題材に以下のポイントについて紐解いて行きたいと思います。
商船三井の株価が急上昇している理由とは?
商船三井の株価は以下となっています。2020年の底からは5倍程度になっています。
この株価上昇の理由についてみていきましょう。
株価の上昇は利益が急騰したことに起因
株価の上昇は非常に単純で業績が急騰していることに起因しています。
売上は増えていないのに純利益が急騰しているのは日本郵船と川崎汽船とともに立ち上げたコンテナ船の関係会社であるONEの持分法利益を取り込んだことによります。(後述)
売上高 | 営業利益 | 純利益 | |
2007/03 | 1,568,435 | 168,073 | 120,940 |
2008/03 | 1,945,696 | 291,284 | 190,321 |
2009/03 | 1,865,802 | 197,211 | 126,987 |
2010/03 | 1,347,964 | 20,939 | 12,722 |
2011/03 | 1,543,660 | 123,400 | 58,277 |
2012/03 | 1,435,220 | -24,459 | -26,009 |
2013/03 | 1,509,194 | -15,766 | -178,846 |
2014/03 | 1,729,452 | 41,092 | 57,393 |
2015/03 | 1,817,069 | 17,249 | 42,356 |
2016/03 | 1,712,222 | 2,323 | -170,447 |
2017/03 | 1,504,373 | 2,558 | 5,257 |
2018/03 | 1,652,393 | 22,684 | -47,380 |
2019/03 | 1,234,077 | 37,718 | 26,875 |
2020/03 | 1,155,404 | 23,779 | 32,623 |
2021/03 | 991,426 | -5,303 | 90,052 |
2022/03 | 1,269,310 | 55,005 | 708,819 |
2023/03予 | 1,600,000 | 86,000 | 790,000 |
先ほどの点をより詳しくお伝えします。
2022年3月期の決算資料を見てみましょう。以下は損益計算書ですが純利益7,088億円のうち6,573億円は持分法による投資利益となっています。
この持分法による投資利益とは、ある一定以上の出資を行なっている企業の利益を株式比率に応じて連結で資産に組み込むということを意味しています。
例えば30%出資している会社が1兆円の利益を出したら3000億円を自社の利益として決算に組み込むということです。
そして、この6,573億円の持分法利益の殆どをしめるのがONEからによるものです。
ONEはOcean Network Expressの略で世界のコンテナ船事業に対抗するために2017年7月7日に、川崎汽船、商船三井、日本郵船の3社で定期コンテナ船事業を統合し設立されました。
船隊規模は世界6位となっています。このONEからの持分法利益が組み入れられて純利益の大幅の増加につながっています。
純利益が大きく上昇した理由はコンテナ船の市況が急騰したため
ではなぜONEの利益が急激に上昇したのかという点を見て行きましょう。決算説明資料で詳しく説明されています。
つまりコンテナ船の短期運賃市況が高騰していることが理由としています。ではコンテナ船の市況価格を見てみましょう。
以下のとおりパンデミック発生後に急騰して直近大きく下落しています。
当然業績は「運んだ量×単価」になるので単価が8倍になれば純利益は急騰することは容易に想像できますね。
なぜ商船三井は高い配当利回りとなっているのか?配当金は維持できるのか?
次になぜ配当利回りが高いのかという点についてみていきましょう。
これは非常に簡単なことですが株価の上昇に比して、配当が大きく増加したら配当利回りは上昇します。
配当金は以下の通りコロナ前の15円から20円という水準から現在は400円から550円と約30倍に急騰しています。
2013/03 | 0.00 円 |
---|---|
2014/03 | 16.67 円 |
2015/03 | 23.33 円 |
2016/03 | 16.67 円 |
2017/03 | 6.67 円 |
2018/03 | 6.67 円 |
2019/03 | 15.00 円 |
2020/03 | 21.67 円 |
2021/03 | 50.00 円 |
2022/03 | 400.00 円 |
2023/03(予) | 550.00 円 |
株価が5倍にしかなっていないのに配当金が30倍になっているので、当然配当利回りは高くなります。
ちなみに最新の2022年2Q決算時点でのキャッシュフロー計算書は以下の通りとなっています。
営業CF:1716億円
投資CF:▲570億円
財務CF:▲1190億円 (内配当金支払い1,079億円)
2Qまでの純利益が6015億円であるにも関わらず 営業CFが1716億円しかないのは利益の殆どが持分法利益によるものだからです。
持分法利益は出資会社の利益を数値上組み入れるだけなのでキャッシュははいってこないのです。
現在の事業環境で稼げる営業利益の6割を配当金として払い出しているので、市況が沈んだ瞬間に維持は不可能なものになりますね。
商船三井の今後の株価の見通しとは?海運株の今後は暗い?
重要なのは商船三井の今後の株価がどうなるかということです。
株価というのは半年から1年さきの利益を織り込んで動いて行きます。そして海運株について確実にいえることが1つあります。
それは先ほどお伝えした通り利益上昇を牽引していたコンテナ船の市況が既に暴落しているということです。
現在は市況が高かった時に契約した分が利益を支えています。しかし、いずれ時間が経過すると現在の市況で契約する分が大半となっていきます。
あと半年から1年経過すると2020年以前の利益水準に徐々に戻っていくことが想定されます。
更に現在世界中のインフレと金利上昇によって景気後退が訪れる懸念が高まっています。
世界的な景気後退となると当然海運市況も地に沈んでいくので純損失になることも考えられます。
現在の株価を長期間維持することは不可能な可能性が高いでしょう。これは同業の日本郵船も同様です。
【なぜ高い】日本郵船の配当利回りはなぜ異常値なのか?今後の見通しは不況到来・需要悪化で株価は急落?
これは投資家はわかりきっていると思いますが、配当金があまりにも高いので現在の水準で耐えているというのが実態となります。
しかし、さきほどお伝えしたとおり事業利益が悪化すると現在の水準の配当金を拠出し続けることは不可能となります。
すると、配当金の下落と同時に株価も元の水準に近いところまで下落していくということになります。
2023年3末まで保有していれば期末配当250円程度出すことを決算で述べています。現在の株価3200円から考えると8%程度となります。
現在から投資して2023年3月末まで保有した場合に期末配当を受け取ることはできますが、株価が8%以上下落すればトータルでは損失を被ることになります。
市況の急落から考えると8%程度のクッションでは心もとないですよね。あえてリスクを冒して投資をする妙味はないと考えています。
安定したリターンを得たいという方は以下で有望な投資先について紹介していますのでご覧いただければと思います。
まとめ
今回のポイントを纏めると以下となります。
✔︎ 株価急上昇の要因はシンプルに利益が上昇したこと
✔︎ コンテナ船市況の急騰によって持分法会社の利益が急上昇したことが要因
✔︎ 現在の配当金水準を今後も維持していくことは不可能
✔︎ 現在の市況で契約された分が大半を占めるようになると利益も配当金も低下して株価も下落していく
✔︎ 配当金目当てで投資するのは2023年からは危険