まずヘッジファンドという言葉をきいただけで、日本人がまず思い浮かぶのは村上ファンドなのではないでしょうか?
村上ファンドがニッポン放送株でインサイダー取引を行った嫌疑で、逮捕されメディアが大々的に喧伝しました。
結果的に日本人の脳裏に「ファンド=危険、犯罪、金の亡者」というイメージが張り付いてしまいました。今日は本当にヘッジファンドって怪しい存在なのか?
という点について詳しく説明していきたと思います。
ヘッジファンドのイメージって本当?
冒頭で説明した村上ファンドの件と加えて日本人のファンドとヘッジファンドのイメージはこんな感じではないでしょうか?
- 犯罪的な集団?
- 市場を操っている?
- 派手なパフォーマンスをあげている?
- ハイレバレッジで危険な投資をおこなっている?
- ヘッジファンドマネージャーの給料は莫大?
- そもそも表にでない闇の集団?
等々、色んなイメージ、主に悪いイメージの方で抱いていると思います。
それぞれについて説明していきたいと思います。
犯罪的な集団?
犯罪的な集団かどうかという点についてです。確かに本当に一部のファンドは実際に運用していないのに資金を集めて既存投資家に分配しているポンジ・スキームを取っている詐欺的なファンドも存在しています。
ある限られたファンドが犯罪行為を行うことにより、ヘッジファンド全体のイメージが悪くなっている所はメディアの影響が大きいです。
富裕層から資金を集めて派手な運用成績を出している煌びやかなファンドを叩くと視聴率が上がりますし、日本人は出る杭はうつ性質なので特にこの傾向が強いですね。
年100%を達成していますといったような、無茶苦茶な運用成績を誇大広告してくるようなファンドは注意した方がいいでしょう。
市場を操っている?
ヘッジファンドが市場を大きく動かした事例としてジョージソロスのファンドが英ポンドを売り込みまくり、一夜で1000億円の利益をえたことが有名です。
然しこれは本当に市場操作なのでしょうか?
実は調べてみると本質は実態の実力より政府により過大に評価されていた英ポンドを適切な水準に戻す取引であったことが分かります。
以下以前の私の記事ヘッジファンドの成り立ちと歴史で事の顛末を纏めています。
ご興味がありましたら、以下抜粋部分を読んでみて下さい!
当時英国は現在のユーロの実現に向けてドイツのマルクに対して一定程度固定するシステムを取っていました。
然しこの固定レートがイギリスの経済の実態から考えて不当に高いものであると考えたソロスは1992年にBoEの為替介入に対して、100億ドル相当のGBPを売り浴びせBoEの為替介入を崩し、GBPが大暴落し一夜で9億6000万ドル(日本円で1000億円)の利益を得た経済的事件です。
この事件が起こった9月15日を現在でもイギリスではBlack Wednesdayと呼んでいます。(因みにソロス自身はWhite Wednesdayと皮肉を込めて呼んでおります)
ソロスにとって市場とは常に適正価格を提示しているものではなく、不完全な知識を持った不完全な人間達により評価されているもの故、適正価格として存在することは滅多にないという考えのもと割安であるものを買い、割高であるものを売るということを一貫して行い、連戦連勝を収めてきました。
ソロスが行ったのは適正価格と乖離している株、債権、為替等の金融商品を見極め、適正と思われる水準に向けて売買を行うという王道の手法なのです。
真っ当なヘッジファンドはこのように価格の歪みをみつけ、歪みをただす投資活動を行っています。寧ろ市場をあるべき姿に戻す役割を担っており、適切な市場を維持するためになくてはならない存在といえます。
派手なパフォーマンスをあげている?
確かにヘッジファンドの中には高いレバレッジを掛けて年率50%-100%の派手なパフォーマンスを追求しているファンドもあります。
ただレバレッジを掛けることは安定的な資産運用には向いていません。例えば自分が1000万円をレバレッジ3倍掛けているファンドに投資するとします。
ここでこの預け入れたファンドが投資した銘柄が20%値下りしたとします。
するとレバレッジを掛けていますので、1000万円 × 3倍 × 20% =600万円を一気に失い、400万円となってしまいます。
ここまで落ち込むと、真っ当な運用をして1000万円を取り返すのは非常に難しいです。ヘッジファンドだから派手な利回りを求めると、どこかで大きな損失を負う事になるのでおすすめできません。
ヘッジファンドマネージャーの給料は莫大?
ヘッジファンドマネージャーの給料は少ない人もいますが、青天井でもあります。
これはヘッジファンドマネージャーの収入の殆どが、運用しているファンドの運用成績に依拠している為です。
例えば、5000億の巨大なファンドを運用しているマネージャーが、その年20%の運用利回りを上げたとします。すると運用収益は1000億円です。
この運用利回りの中からファンドマネージャーが30%を報酬としていただくという場合、収入は300億円と巨額になります。
一方、もし運用収益が0%またはマイナスだった場合は報酬は殆どなしということになります。要はいい成績を残せば、預入額も増えるし、報酬も増える仕組みになっているのです。野球選手と通じるところがありますね。
悪い成績ばっかりだしていると淘汰されるし、いい成績を残せば何十億、何百億ともらえるのです。自分の残した運用成績の一部をもらうという形態の為、不当に取りすぎているということはありません。
寧ろこの形態の為にモチベーションは非常に高く、相場に対して真剣にむきあっているということが出来ます。
そもそも表にでない闇の集団?
そもそも周りに村上ファンドに投資していたなんて話はきかないですし、あまり周りにヘッジファンドに投資しているという話もきかないでしょう。
ヘッジファンドの成り立ち自体が、欧米の富裕層の資産を守り育てることだったので、主に資産を預かっているのは富裕層からです。
しかも1Lotは1000万円以上、場合によっては1億円以上と閾値を高く設定しています。
ヘッジファンド側も顧客管理の観点から、少額を大勢から集めるより、大金を少数から集める方が、顧客管理コストが低くなります。
ヘッジファンドは少数精鋭なので、管理費用は最小限に抑えたいという思惑もありますし、その方が人件費も安くなりますからね。
また日本にヘッジファンドもあるのか?
と思われているかたもいらっしゃると思いますが、以下のグラフの通り年々日本でも運用額が増えてきております。
密かに日本でも富裕層の間でヘッジファンドへの投資が増えてきております。
以下で日本のヘッジファンドについては詳しく纏めていますので参考にしていただければと思います。
おすすめのヘッジファンド
いままでの話から、ヘッジファンドの中でも、派手な利回りを求めていたり、ハイレバレッジを掛けているファンドは危険であることを説明しました。
投資信託で大損するリスクは把握できているか?手数料よりも深刻なパフォーマンス(利回り)の悪さに焦点。〜投信営業マンの嘘を暴く〜
しっかりとファンダメンタル分析に基づいて投資判断を行っているヘッジファンドの中には、日本でも安定的に20%程度の利回りを上げているファンドが存在します。
ヘッジファンドへの投資に興味を持っている方は、よくファンドの善し悪しを見極めることが大切だと言えるでしょう。