新興国株式

ベトナム成長株インカムファンドは2022年以降の金融引締め局面でもおすすめの投資信託と言えるのか?最新の運用状況から徹底評価。VN指数/ベトナム株式ファンド/CAM ベトナムファンド/DIAM ベトナム株式ファンドとも比較検証

2022年6月27日

新興国に投資するというのは、「リスクが高そう」「法律がよくわからない」「大損しそう」と考えてしまいませんか?

問題ありません。その認識はとても正しいです。

しかし、ビジネスでもなんでも、「人が怖い」と思うところに好機があったりするものです。

 

新興国株式に関しては、以前はとにかく「怖い」「得体が知れない」と多くの人が思っていました。

しかし、近年はインターネット証券の登場もあり、新興国株をポートフォリオに入れてリターンを高める手法も一般的になってきました。

 

そして、新興国投資をするのであれば間違いなく「投資信託」を活用することでしょう。

前置きが長くなってしまいましたが、今回はベトナム投信として比較的評判の良かった「ベトナム成長株インカムファンド」について分析していきたいと思います。

ベトナム成長株インカムファンド

 

 

ベトナムは成長著しい国であり、大きな利益を獲得することも可能かもしれませんが、タイミングを間違えると大損を被ってしまいます。新興国株式はタイミングが非常に重要なのです。

 

それでは、内容に入っていきたいと思います。

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ベトナム成長株インカムファンドの概要

手始めに、ベトナム成長株インカムファンドの概要を解説していきます。

 

ベトナム成長株インカムファンドの運用会社

ベトナム成長株インカムファンド」はアジアエマージング地域の株式で運用をするファミリーファンドとなります。

ファミリーファンド(方式)とは、複数の投資信託の資金をまとめて「マザーファンド(親ファンド)」と呼ばれる投資信託に投資し、マザーファンドで株式や債券などに分散投資をして運用する方式のことをいいます。

一般の投資家は、「ベビーファンド(子ファンド)」と呼ばれる投資信託を購入し、ベビーファンドがマザーファンドに投資をする仕組みになっています。

内外の株式や債券などの幅広い資産に分散投資をするファンドを複数運用している投資信託会社の場合、1つずつのファンドごとに国内株式や外国債券などの銘柄選択をするよりも、

国内株式のマザーファンドや外国債券のマザーファンドを作って、複数のベビーファンドがファンドごとの運用方針に基づく投資割合に応じて複数のマザーファンドに投資したほうが、運用効率も高くなると考えられます。

このような場合にファミリーファンド方式が採用される傾向にあります。

引用:日興證券SMBC

 

つまりはベトナム成長株インカムファンド自体が運用をしている訳ではなく、一般投資家から資金を集める役割を担っているということですね。

運用自体は「キャピタルアセットマネジメント」で実施されています。

 

キャピタルアセットマネジメント株式会社は、2010年にキャピタル・パートナーズ アセットマネジメントとプラザキャピタルマネジメントの合併により発足した運用会社。親会社はキャピタル・パートナーズ証券株式会社(http://www.capital.co.jp/)(2018年3月末現在)。

引用:投信資料館

 

 

運用方針

ベトナム成長株インカムファンドの運用方針として、ベトナムの取引所に上場する株式、世界各国/地域の取引所に上場する「ベトナム関連企業」の株式に投資を実行していきます。

ここでいう「ベトナム関連企業」とはベトナムで営業する 、またはベトナム経済の動向から影響を受けるビジネスを行なう企業のことを指します。

大型銘柄のみならず、中型銘柄小型銘柄も企業の成長が見込むことができれば、投資を実行していきます。

 

大型銘柄だけではリターンが高くなっていかないので、スパイスとしての中型・小型銘柄は必須ですね。

 

 

運用スキーム

ベトナム成長株インカムファンドはファミリーファンドですが、具体的なスキームは以下の通りとなっていますね。

<ファンドの仕組み>

 

 

一般投資家は販売会社を通してベトナム成長株インカムファンドを購入し、あとはベトナム成長株インカムファンドが出資をするマザーファンドの運用結果を待つばかりです。

 

 

分配方針

気になるのは分配方針ですが、以下の通りスケジューリングされています。

ベトナム成長株インカムファンド分配方針

 

年4回(2月20日、5月20日、8月20日および11月20日。ただし、休業日の場合は翌営業日とします。)決算を行ない、原則として以下の方針により分配を行ないます。

●分配対象額の範囲は、経費控除後の配当等収益および売買益等の全額とします。

●収益分配金額は、委託会社が基準価額水準、市況動向、残存信託期間等を勘案して決定します。原則として、分配対象 額が少額の場合には、分配を行なわないこともあります。

●留保益については、委託会社の判断に基づき運用の基本方針と同一の運用を行ないます。

 

年4回、運用成績が好調であれば分配による収益(インカムゲイン)が入ってくるということですね。

直近の分配金は以下の通りとなっており四半期毎に0円〜100円の値で推移しています。後続で分配金を配るファンドは非常にネガティブであるという筆者の意見を記載しています。リターン効率が著しく下がるのです。

 

決算日決算日 分配金 落基準
2022年5月20日 100円 15,865円
2022年2月21日 100円 17,115円
2021年11月22日 100円 16,953円
2021年8月20日 100円 15,734円
2021年5月20日 100円 13,984円
2021年2月22日 100円 12,588円
2020年11月20日 100円 10,383円
2020年8月20日 0円 9,088円
2020年5月20日 0円 9,157円
2020年2月20日 100円 10,768円

 

 

手数料

海外投資とは、手数料が高いものです。特に新興国投資信託に関しては取引をするにも容易ではなく、為替手数料なども含まれているため一般的な国内投資信託よりもどうしても購入手数料、信託手数料は高くなります。

ベトナム成長株インカムファンドの購入手数料は3.24%(税抜3.00%)、信託手数料は年率で1.8468%(税抜1.71%)となります。

初年度は利回りで10%を上げても、運用収益からマイナス5%を見込むことになります。

 

資産状況(構成銘柄&業種別構成比率)

ベトナム成長インカムファンドの資産状況をみていきましょう。まずは組み入れ銘柄です。以下は2022年4月28日時点のPFです。

組 入 銘 柄   上 位 1 0 銘 柄
銘柄名 業  種 組入比率
ベトナム外商銀⾏ (ベトコムバンク) 銀行 6.40%
モバイル・ワールド・インベストメント 小売 6.30%
FPT テクノロジー・ハードウェアおよび機器 5.60%
ビンホームズ 不動産 4.50%
デジワールド テクノロジー・ハードウェアおよび機器 4.50%
ドゥックザン化学 素材 4.30%
ベトナム繁栄商業株式銀⾏ 銀行 4.30%
ペトロベトナム・ガス 公益事業 4.20%
マッサングループ 食品・飲料・タバコ 4.00%
ホアファットグループ 素材 3.60%

上位には銀行、大手小売、テクノロジー、不動産など満遍なく他業種を組み入れています。

ちなみに以下は2020年1月時点のポートフォリオだったのですが、食品のビナミルクに替わりモバイルワールド・インベストメントが入っているのが特徴的です。

 

銘柄 業種 比率
ベトコムバンク 金融 9.7%
FPT テクノロジー 8.0%
ビナミルク 食品 6.7%
ビンホームズ 不動産 6.6%
ビングループ 不動産 6.5%
ペトロベトナムガス 公益事業 5.7%
軍隊商業銀行 金融 5.4%
サイゴンビール 食品 4.7%
ベトナム投資開発銀行 金融 4.6%
ホアファットグループ 素材 4.6%
上位10銘柄合計 62.5%

 

 

続いて、業種別の比率をご覧ください。銀行が上位におり、金融引き締めにおいては堅実なポートフォリオともいえます。インフレ局面ですから素材、不動産も上位におり、堅実です。

 

マザーファンド 業種構成⽐
業  種 組入⽐率
銀行 25.9%
素材 14.2%
不動産 13.2%
テクノロジー・ハードウェアおよび機器 10.2%
食品・飲料・タバコ 9.3%
小売 6.4%
公益事業 5.8%
資本財 3.7%
その他 11.3%
合計 100.0%

 

以下は2020年時点の業種組入比率ですが、2022年の素材のランクアップが著しいですね。

 

業種 組入比率
銀行 25.7%
不動産 21.8%
食品 14.5%
テクノロジー 8.2%
公益事業 8.1%
運輸 5.8%
素材 4.7%
耐久財 4.1%
その他 7.1%

 

 

ベトナム成長株インカムファンドの運用成績・利回りをVNINDEX指数と比較して検証

ベトナム成長株インカムファンドをVN指数と比較し、どれほどの成績を収めているのかを客観的に見てみましょう。

VNINDEX指数は、「ベトナム株価指数」とも呼ばれ、ベトナム社会主義共和国の最大都市ホーチミンにあるホーチミン証券取引所(Hochiminh Stock Exchange)に上場の全銘柄から構成される時価総額加重平均指数をいいます。

これは、東南アジアのベトナム株式市場の代表的な株価指数で、2000年7月28日を基準日とし、その日の時価総額を100として算出されます。

また、ベトナムには、首都ハノイにあるハノイ証券取引所に上場する銘柄で構成される「ハノイ証券取引所株価指数」もあります。

引用:VN指数(ベトナム株価指数)

 

まずはベトナム成長株インカムファンドの基準価額です。

基準価額・純資産総額の推移等( 2014/8/20 〜 2022/4/28 )

 

 

 

基準価額は2014年8月20日設定(10,000円)後に、現在17,823円となっており、設定来133.8%のリターンとなります。

年平均利回り5%くらいですね。新興国のアクティブファンドであれば、もう少し頑張ってほしいですが。

 

ちなみに2018年からの年間リターンを見てみると以下の通りとなっています。わかりやすく異次元金融緩和だった2021年のみがハイリターンです。しかしアクティブファンドの腕が試されるのは下落相場です。

2021年のみベトナム成長株インカムファンドに乗るのは正解だったかもしれませんが、2022年には既に金融引き締めが始まっています。

1-3月期 4-6月期 7-9月期 10-12月期 1-12月期
2022年 9.49% -- -- -- --
2021年 14.94% 23.00% -0.70% 8.89% 52.86%
2020年 -34.27% 23.23% 9.32% 18.97% 5.35%
2019年 5.64% -7.57% 11.27% -4.58% 3.67%
2018年 12.27% -16.10% 5.84% -15.10% -15.37%

 

2018年にも一時金融引き締めがありましたので、ここでベトナム成長株インカムファンドが成果を出していれば2022年以降も期待のファンドとして太鼓判を押したいところでしたが、-15.37%と投資信託失格とも言える壊滅的なリターンを残しているので厳しいです。

 

ついでにリターンをVN指数と比較すると、ベトナム成長株ファンドは負けてしまっていますね。

 

橙色:ベトナム成長株インカムファンド
青色:VNINDEX指数

ベトナム成長株インカムファンド/キャピタルとVNINDEX比較

 

 

 

ベトナム株式市場は日本の株式市場とは異なり特殊で、外国人規制があります。株式市場全体の49%未満しか外国人が株式を保有できないという規制です。

そのためVN指数と同様の動きを体現するのは現時点では厳しい状況となっています。

 

気をつけよう:分配金拠出型投資信託の罠

先程の成績は分配金を拠出せずに運用した場合です。

もう一度先ほどの図に戻ると、分配金を拠出した場合の基準価格は、8年経過しているにも関わらず未だ17,000円台となっています。

基準価額・純資産総額の推移等( 2014/8/20 〜 2022/4/28 )

 

 

分配金を拠出している結果、ファンドのリターンが全然伸びていないのです。分配金再投資後基準価額と大きな差が出ていることがわかると思います。(しかもこれは税前で計算されており、幻のリターンです)

投資家としては、配当金は嬉しいものです。しかし、再投資するにも税金(20%)を支払った後の金額が加算される結果、リターンが著しく悪くなるのです。

 

投資の基本として、とにかくプラスの%を重ねていくことが複利運用として資産を一気に伸ばす錬金術であるにも関わらず、ニッセイ・インド厳選株式ファンドは配当を餌に投資家を集め手数料で食べていくことを主眼としていると筆者は感じます。

これはベトナム成長株インカムファンドに関わらず全ての分配金拠出ファンドに言えることです。

 

さらにわかりやすく説明すると、例えば1,000万円を年利20%の投資信託で運用、毎年の拠出金100万円を出す場合と出さない場合を考えます。

 

[100万円の分配金を拠出する場合]

  • 1年目:1000万円×120%=1200万円 ⇒ 分配金100万円拠出 ⇒ 投資元本1100万円
  • 2年目:1100万円×120%=1320万円 ⇒ 分配金100万円拠出 ⇒ 投資元本1220万円
  • 3年目:1220万円×120%=1464万円 ⇒ 分配金100万円拠出 ⇒ 投資元本1364万円

投資元本:1000万円⇒1364万円(+364万円)
分配金:300万円
合計:+664万円

 

[100万円の分配金を拠出しない場合]

  • 1年目:1000万円×120%=1200万円
  • 2年目:1200万円×120%=1440万円
  • 3年目:1440万円×120%=1728万円

投資元本:1000万円⇒1728万円 (+728万円)

 

結果的に複利で運用した方が高い成績を残すことが分かりますね。

分配拠出する投資ファンドへの投資はおすすめしません。

配当金が入金されて嬉しい気持ちになるのは理解できますが、それは資産増加を足踏みさせていくだけなのです。

 

 

他ベトナム投資信託との比較/ベトナム株式ファンド/CAM ベトナムファンド/DIAM ベトナム株式ファンド

ベトナム株投資信託の中でもベトナム成長株インカムファンドはどの程度の成績を収めているのでしょうか?

ベトナムに投資をするのであれば、やはり最も良い成績で運用している投資信託を購入したいですよね。

チャートで比較してみましょう。

 

  • ベトナム成長株インカムファンド(9A311148)
  • ベトナム株式ファンド(79312107
  • CAM ベトナムファンド(9A311108)
  • DIAM ベトナム株式ファンド(47311156)

 

ベトナム成長株インカムファンドを他のベトナムファンドと比較

 

 

 

DIAMベトナム株式ファンドが一番ましですね。ついでベトナム株式ファンド、そしてCAM ベトナムファンドです。

悲しくもこの記事で分析したベトナム成長株インカムファンドが一番体たらくな運用を行っています。

他のファンドは別で分析していきたいと思います。

 

 

まとめ

ベトナム成長株インカムファンドは、VN指数をアンダーパフォームしており既に魅力が欠けます。

また、現在2022年以降しばらく継続するであろう金融引き締め局面において、似たような状況だった2018年に大きく損失を出してしまっているアクティブファンドであり運用の信頼性が筆者個人としてはありません。

下落相場の中で真の実力が問われますが、その実力も薄く、上昇相場でのリターンも他ファンドと比較するとどうしても劣後してしまいます。

 

ベトナム成長株インカムファンドを投資先として選ぶことはないと考えるのが自然でしょう。

 

最後に:資産を飛躍的に増やす方法は明確に決まっている

積み重ねる運用

 

 

資産を大きく増やすにはどうすれば良いのでしょうか?

上場小型ベンチャー株に力一杯、資金を投入。一か八か、株価の急騰を願ったり、信用取引でレバレッジを思いっきりかけてみるのも良さそうです。仮想通貨の草コインも人生一発逆転があるかもしれません。

断言します。上記のような思考の方は一生資産が増えません。

そもそも一発の取引で大儲けを狙えるというのは、同じく容易に資金を溶かす可能性も高いということです。そんなものは投資とは言えません。投機と考えても質が低いです。もう少し丁寧に資産の扱い(延いては人生)を考えてみましょう。思考をガラリと変えてみましょう。

 

大事なのは「リターンが小さくても確実にプラスを、時間をかけて積み重ねていく(複利を生かす)」ことです。世界一の投資家であるウォーレン・バフェット氏も投資で最も大切なのは以下の2つのルールとしています。

 

  1. 絶対にお金を損しないこと。
  2. 絶対にルール1を忘れないこと。

 

 

この「損をしない」「プラスリターンを確実に積み重ねていく(複利を生かす)」という重要性を理解したところで資産運用は始まります。好きな企業の株、高配当・優待目当てなど、あなたの資産を減らしてしまう運用はやめましょう。「Classic」且つ「質実剛健」な資産運用を行なっていくべきです。

 

私も資産運用歴は既にかなり長いです。そしてこの思考に辿り着き、プラスリターン×複利運用を実施してからの資産増加スピードは圧巻でした。この哲学を実践している、私のポートフォリオに入っているファンドも今回まとめてみました。ぜひ参考にしてみてください。

 

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