今日はヘッジファンドについて細かく解説していきたいと思います。
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まずヘッジファンドで調べてみると大抵は「どのようなマーケット環境においても利益を出すことを目的に運用を行うファンド」であると紹介されているかと思います。
例えば日経平均の高配当銘柄に投資するという投資信託があったとします。
この投資信託は日経平均株価を構成している高配当企業の業績に集中的に投資を行いますが、高配当企業の株価が下落すると結果として投資信託の価格も下落をするという事態を招きます。
然しこれは、高配当銘柄に投資することを選んだ、個人の責任でもあると言えます。
一方、ヘッジファンドではどのような市況であっても利益獲得を目指す為、ファンドマネージャーは市況環境を言い訳にすることはできません。
では、一言でヘッジファンドといっても実際にはどのような種類があるのでしょうか?
詳しく見ていきたいと思います。
ヘッジファンドの種類
一言にヘッジファンドといっても、ヘッジファンドの運用の種類は様々なものがあります。代表的なものを列挙していきたいと思います。
① 株式ロング・ショート戦略
名前の通り、売ったり買ったりして利益を得る手法です。
この「売ったり」というのが、通常は保有している株式を売却することを指すと思いますが、ここでは更に売りから入る空売りという手法が用いられます。
この空売りというのは現物株を保有していないにも関わらず株を借りて売却し、
将来買い戻すという取引で、例えば現在A社の株価が割高であると思えば、A社の株を保有していないにも関わらずA社の株を借りて売るという取引を行います。
個人でも証券会社で信用取引口座を開設すれば空売りを実践することが出来ます。この手法を用いることにより、例え市況全体が下落基調であったとしても、
空売りを行い下落したところで買い戻しをすることにより利益を得ることができ、市況環境によらず利益を追求することが出来る運用手法となります。
② マーケット・ニュートラル
上記で紹介したロング・ショート戦略の進化版で、空売りしている投資額と、買持している投資額を同一にすることにより、
株式市場全体の動きではなく個別銘柄の値動きにより収益獲得を目指した運用戦略です。
③ バリュー株投資戦略
株式を分析し明らかに割安であると考えられる株式を保有し、
適正価格まで上昇をしたら売却するというバフェットの師であるグレアムが提唱したシンプルでありながら王道の手法です。
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何故、割安株を保有して売るだけのこの手法が如何なる市況でも利益獲得を目指すヘッジファンドに分類されるかと疑問を持たれたかたもいるでしょう。
実は、明らかな割安に放置されている株は、
東証一部ではなく福岡証券取引所や名古屋証券取引所といった地方証券取引所に上場されており大抵は時価総額が100億円未満の小型銘柄に多く存在しています。
このような銘柄は、時価総額が少ないという理由でアナリストからは分析されず、
また投資信託やETFにも流動性が低いという理由で構成銘柄として組み込まれず、有り得ないほど割安な株価のまま放置されています。
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(例えるなら1万5000円が入った封筒が1万円で売られているといった状態です。)
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その為、市況が上向いても下向いても抑々ETFや投資信託に組み込まれていないため取引されず市況と連動しないという性質があります。
またこの手法は上記で述べた通り時価総額が小さい企業が多い為、
ヘッジファンドとして多額の資金を注入することにより経営に対して提言できる立場になることも場合によっては可能となります。
以下に説明する④のイベント・ドリブン戦略と組み合わせることにより収益を最大化することが可能となります。
④ イベント・ドリブン戦略
合併・買収・分社・増配などの出来事が起きた際に、そのイベントによって生まれる収益を得るための手法です。
このような出来事は株価を大きく動かす可能性が高い為、その機会を狙って投資することにより収益を上げる手法です。
事前に買収の話や合併の話を入手することは、インサイダー取引となり違法ですが、
例えば割安な株を大量に取得し、経営に対して自己株買を働きかける等の株式価値増価策を提案することにより保有株の株式価値を上げる手法も包含します。
⑤ グローバルマクロ戦略
投資対象は株式、先物、デリバティブ、商品、為替等様々です。
マクロファンダメンタル分析を行い、今後の大きな流れの中で割安と思われる商品を購入し、割高と思われるものを売却することにより収益獲得を目指すファンドです。
これ以外にも様々な種類のヘッジファンドが世の中には存在しますが、
ロング・ショート戦略のように買いからのみではなく売りから入り両局面で利益を得る手法が多いです。
このような戦略は確かに常に収益機会を有しておりますが、危険な点があります。
それは売から入る場合に多いのですが、時に1600年代のオランダのチューリップ、
日本の戦国時代の茶器、1980年の日本のバブル、2000年のIT企業株、直近では仮想通貨(これは現状不明)といったように明らかに割高であると思われる価格であっても、
人々の期待感からぐんぐんと値上がりする可能性があり、
その場合は青天井のリスクを負うことになります。
一方、③のような投資手法は地味ではありますが、例えていうなら1万5000円の現金が入っている封筒を1万円で買うといった手法である為、
株価の下値は非常に限定的となり安定して運用を行うという特徴があると共に再現性が高い投資手法となります。
要諦すると前者は派手な利回りを達成することがある一方、
大きな損失を被る可能性のあるハイリスク・ハイリターン投資手法であり、後者はローリスク・ミドルリターンの投資手法であるといえます。
個人が資産を防衛しながら、安定的に資産形成を行うという目的に最も適しているには②のバリュー株投資を洗練された手法で実践しながら、
④のようなイベント・ドリブン戦略を取り入れているファンドに投資していく手法です。
また先ほどミドルリターンと記載しましたが、
この手法でも年間利回り20%程度、
投資家の手にする収益ベースで10%程度を比較的安定的にあげているファンドも御座いますので十分な運用益を享受することが出来ます。
ヘッジファンドに投資している人ってどんな人?
皆さんは周りにヘッジファンドに投資しているという人はおりますでしょうか。
恐らく発見自体の困難さが故に、投資の選択肢に入っていない方が殆どかと思います。
もし仮に選択肢に入っていたとしてもどのように投資したらいいか分からないという壁にぶち当たると思います。
まずヘッジファンドに投資している人たちというのは一般人ではなく、
元々は欧米の貴族が自身の資産を子孫に安定的に継承していく為に出来たという歴史もあり、所謂富裕層と呼ばれる方々が投資をされています。
また多くのヘッジファンドでは最低投資金額が1000万円から、
時には1億円からという金額から門戸を開いており、
プライベートバンク等を通して紹介される為、一般の方々には目に触れる可能性が少なくなります。
また以外に思われるかもしれませんが、欧米の年金基金や保険会社等は運用Portfolioの中の一定割合をヘッジファンドに投資しています。
ヘッジファンドの側としても、
投資してくれる人が多いほど多くの人の利害を考えて動く必要がでてくる為、
少数の富裕層から纏まった金額を集める方が効率がいいという側面もあります。
では一般の人は投資することが出来ないのかというと、
最近は門戸を広げたヘッジファンドも出てきており、数百万円からの投資を受け入れている国内のファンドも出てきました。
国内で投資ができて尚且つ安定的な投資収益を上げているヘッジファンドを活用することにより、資産形成を行う素地が出来つつあるというのが最近の状況です。
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ヘッジファンドは手数料が高いというけど本当?
はい高いです。然し投資信託と比べると手数料の質が違います。
この点はまた解説しようと思うのですが、投資信託は主に預けている資産の何%という手数料が発生するのに対して、
多くのヘッジファンドは運用収益に対して何%という報酬形態となっている場合が多いです。
→ ヘッジファンドの手数料(管理手数料・成功報酬)を細かく解説、投資信託を例にパフォーマンスを比較!
預けている資産の3%という投資信託の場合例えば最初に1000万円を預けたとして、一年間の運用の結果800万円まで下落したとします。
この場合値下がりをしているにもかかわらず、800万の3%つまり24万円が徴収されることになります。
収益の40%を頂きますというヘッジファンドの場合、1000万円を預けて800万に減った場合、
運用手数料は0、1200万に上昇した場合運用手数料は200万の40%で80万となるという仕組みになります。
(ヘッジファンドも株式調査手数料等は徴収される場合が殆どですが、主な収益源は運用手数料となります)
この為、ヘッジファンドのファンドマネージャーは収益を上げることにより自身の給料が大幅に変動する為、
生きるか死ぬかの真剣勝負で毎日金融市場と向き合い、成績の悪いファンドマネージャーは次々と淘汰されていきます。
また最初に記載した通り、市況を言い訳には出来ないため、大変にシビアな環境の中で運用を行っているプロ集団によって運営されております。
一方投資信託の場合、多くはサラリーマンファンドマネージャーであり、
運用成績により多少の評価給に変化はあるかもしれませんが、基本的に運用成績により大幅に給与が変動することはありません。
また基本的にはテーマがある為、テーマに沿った投資を行っている限り、責任を問われることは少ないです。
(例えば新興国投資信託の運用を任され、新興国株式市場全体が沈んでいる年の運用成績が悪くても文句は言われない)
例え、手数料が高かったとしても激しい生存競争を勝ち抜いているプロ中のプロと、運命共同体としての報酬形態で運用して頂いた方が良い結果を期待できます。
現に世界の富裕層がヘッジファンドを投資先として選択していることが、何よりヘッジファンドが資産形成を行う上で秀でているかということを証明しております。