日本には4500種類ほどの投資信託が存在しています。なかでも9割程度はインデックスに対してプラスのリターンを狙うアクティブ型の投資信託です。
以前、アクティブ型の投資信託はインデックス型に比べて低いリターンということについてはお伝えしました。
➡︎ 失敗して地獄をみないために!投資信託で大損するリスクは把握できているか?手数料よりも深刻なパフォーマンス(利回り)の悪さに焦点。
ただ、全ての投資信託がインデックスに対してマイナスのリターンというわけではなく、高いリターンを出している投資信託も存在しています。
本日は最近ヘルスケアブームにのって喧伝されている “健次”という投資信託について取り上げていきたいと思います。
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グローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンド (通称:健次)の特徴とは?
まず題で健次という名前を出しましたが、最初私はなぜ人の名前?
私の親戚にも健次という金融関係で働いている方がいるので、まさかと思いましたが、この投信の本名はグローバル・ヘルスケア&バイオ・ファンドという大仰な名前でした。
なるほど、ヘルスケアだから健が付くわけですね。しかしゼウス投信といい最近は投信に愛称をつけるのが流行っているのでしょうか。。
と、余計な話はここまでにして、健次の概要を紹介していきます。
運用委託会社:ウエリントン・マネージメント・カンパニー
投信設定日:2004年2月27日
投信償還日:2029年2月27日
投資対象:世界主要先進国のヘルスケア・バイオ関連企業の株式
詳細に分割すると以下4分野に投資するそうです。
薬局や医療機関向けの医薬品の製造・開発バイオテクノロジー
遺伝子の分析・研究を元に薬を開発する分野医療製品
医療器具の製造・開発医療・健康サービス
病院経営等(総合商社でもよく投資してる分野ですね)
主に米国を中心とした企業に投資していますが、為替ヘッジはおこなっておりません。そのため、投資先企業の外貨が上昇すると基準価格は上昇しますが、円高となると基準価格は下落してます。
また、分配金は半期決算毎にだすかどうかを決めています。どちらかというと、多くの分配金を出す投資信託となっています。
組入銘柄はヘルスケア・バイオ領域で世界をリードする米国企業が中心
健次は世界のヘルスケア・バイオ領域の魅力的な銘柄に投資をする投資信託ですが、70%が米国企業で構成されています。
以下が2022年2月末の最新の健次の月報に基づく構成上位10銘柄です。
銘柄 | 国名 | 業種 | 構成比率 | |
1 | ユナイテッドヘルス・グループ | アメリカ | ヘルスケア・プロバイダー/ヘルスケア・サービス | 8.2% |
2 | イーライ・リリー | アメリカ | 医薬品 | 6.1% |
3 | ファイザー | アメリカ | 医薬品 | 6.0% |
4 | アストラゼネカ | イギリス | 医薬品 | 4.9% |
5 | ブリストル・マイヤーズ スクイブ | アメリカ | 医薬品 | 4.1% |
6 | ノバルティス | スイス | 医薬品 | 3.7% |
7 | ダナハー | アメリカ | ライフサイエンス・ツール/サービス | 3.5% |
8 | ボストン・サイエンティフィック | アメリカ | ヘルスケア機器・用品 | 3.3% |
9 | エドワーズライフサイエンス | アメリカ | ヘルスケア機器・用品 | 3.1% |
10 | ストライカー | アメリカ | ヘルスケア機器・用品 | 2.5% |
10銘柄中8銘柄が米国企業でしめられています。コロナウィルスのワクチンをいち早く開発したファイザーも組み入れられていますね。 10銘柄の合計が45.4%となっています。
ちなみに以下が2022年3月末の健次の構成上位10銘柄です。1年経過してもそこまで大きな変更はありません。
先進的な分野を切り開いていく米国ヘルスケア企業にブレずに積極的に投資をしていくスタイルであるということができます。
素晴らしい健次の運用成績だがヘルスケア指数と比べると劣後するリターン
では肝心な健次の成績について見ていきたいと思います。
健次は高いパフォーマンスを出している
まずは三菱UFJ国際投信株式会社が出している公式の運用成績をご覧ください。
基準価格は横ばいですが、分配金再投資前提の基準価格は2004年から4.5倍になっています。
分配金再投資のチャートの難点について次項でお伝えしますが、素晴らしい成績ですね。
多額の分配金が健次の成績を毀損している
先ほどのチャートで基準価格と分配金再投資前提の基準価格で大きな開きがあることが分かります。
ここで注意点があります。この分配金再投資前提の基準価格は配当金を出さなかった場合の基準価格になります。
実際に配当金を拠出すると20.315%の税金が取られます。
つまり一度配当金を拠出されてしまうと、再投資する場合は80%分しか再投資することができないのです。
結果的に実際には健次は上記の分配金再投資前提の基準価格を実現することはできないのです。
このように分配金は拠出された時に喜ぶ投資家の方はいらっしゃいますが、最終的な損益を毀損することになってしまうのです。
長期的な資産形成を目指すのであれば、分配金に惑わされずに分配金を出さない投資信託の方が合理的な選択肢となるのです。
ヘルスケアETFであるVHTと比べると低いパフォーマンス
健次が優秀かどうかを測るのであれば、ヘルスケアセクターの平均的な成績と比較する必要があります。
米国のヘルスケアセクター全体に投資をしているETFであるVanguard Health Care Index Fund ETF(通常:VHT)のチャートは以下となります。
ちょうど、健次と同じタイミングからのチャートですが、価格は5倍になっており健次の分配金を拠出しなかった場合のリターンを凌駕しています。
実際には多額の分配金を拠出しているのでさらにパフォーマンスは悪くなっていると言わざるを得ません。
そもそもテーマ型投信は、長期運用に適さない
健次は目論見書でも謳っている通り、ヘルスケア・バイオ関連の株に投資するとしています。
確かにヘルスケア分野自体が堅調そのものです。然し、同じ分野が常に堅調であり続けるということはなかなかありません。
ITバブルというのが良い例ですよね、急速に盛り上がった市場というのはいつかあるべき姿まで凹むものです。
ましてや今既に絶好調を謳歌しているヘルスケア市場に今から投資するのは時既に遅し感があります。
このように特定のテーマにフォーカスした投資信託は、長期投資には向かない性質のものなのです。
自分がどの分野が伸びるかを見る見識眼があるのであれば良いですが、そうでないのであればやめておいたほうがよいでしょう。
アクティブ型投資信託の中でも高い手数料水準
概要の欄でも触れていますが関係者が多いですよね。
三菱UFJ国際投信株式会社が運用すれば良いのですが、ウエリントン・マネージメント・カンパニーの指示に基づいているだけなので関係者が余計に増えています。
更に取り扱いの証券会社や銀行も入ってきます。関係者が多くなればなる程、余計な手数料が増えてくるのです。これも問題です。
そして、更に手数料が高い原因がアクティブ型の投資信託というところです。
アクティブ型というのは、指数(インデックス)に対してプラスのパフォーマンスを目指す為、綿密な調査費ゆえアナリストを雇う費用等が嵩み手数料が高くなる傾向があるのです。
その結果として良いパフォーマンスが出せればよいのですが、結果は上記の通りヘルスケアETFを下回っています。
運用成績が悪いにも関わらず、購入手数料3.2%に加え毎年2.4%を払い続けていては資産が減る一方ですね。
金融庁の森長官の以下の言葉が思い起させられます・・・。
「日本の投信運用会社の多くは販売会社等の系列会社となっています。投信の運用資産額でみると、実に82%が、販売会社系列の運用会社により組成・運用されています。系列の投信運用会社は、販売会社のために、売れやすくかつ手数料を稼ぎやすい商品を作っているのではないかと思います。
これまでの売れ筋商品の例をみても、ダブルデッカー等のテーマ型で複雑な投信が多く、長期保有に適さないものがほとんどです。こうした投信は、自ずと売買の回転率が高くなり、そのたびに販売手数料が金融機関に入る仕組みになっています。」(参照:金融庁HP)
健次の総評
ここまで見てきた通り、特定のテーマに絞った投資信託となっており長期投資には適しません。
更にアクティブ型の運用を行っているが実際にはヘルスケア指数をアンダーパフォームしており芳しくない成績となっている。また、多額の分配金をだしていることで本来得られたパフォーマンスを大きく毀損しているという難点も抱えています。
更に関係者が多く、アクティブ型の投資信託の為手数料が高くなっています。あえて健次に投資をするくらいであれば、ヘルスケアETFヘ投資を行った方が合理的な洗濯となります。
長期投資に最適な投資先として考えるべきこと
資産を安定的に増やしたいのであれば、やはり特定の分野にフォーカスすることなく、常に市場全体を俯瞰してみながら投資を行う必要があるでしょう。
日本株とひとことに言っても様々な銘柄がありますから、その時に応じて最も魅力的な株を選択していくことが大切です。
自らの銘柄を選んで投資ができるノウハウがあれば、もちろん自分の手で株を選ぶことをおすすめしますが、そうでなければプロに任せるというのも選択の一つです。
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