近年、配当よりも自社株買が株主還元策として注目を集める機会が多くなっています。
しかし、そもそも何故自社株買が株主還元になるのかを理解できない方も多いのではないでしょうか?
本日は株主還元策として知られる自社株買いについて、その効果と注意点についてわかりやすく説明していきたいと思います。
自社株買いとは?その効果からメリット・デメリットを解説
まずは自社株買いとは何かということなのですが、簡単にいうと読んで字の如く自社の株を自社が持っている現金で購入することです。
それでは自社株買いを行うことによる効果について図を用いて説明していきます。
自社株買いの効果①:一株当たり利益の上昇
例えば純利益を1000億円出す企業が10億株発行していたとすると、1株あたりの純利益は100億円÷10億株=100円となります。
この企業が5億株を自己株買したとすると、発行済株式は10億株から5億株に減少します。
翌年同じく利益1000億円を稼ぐとすると1株利益は利益が変わってなくても発行済株が半分になる為、2倍になります。
企業の株価は以下の式で表される為、企業の人気度を表すPERが変わらないのであれば、株価は上昇するということになります。
株価⤴ = EPS⤴ × PER→
自社株買いの効果②:ROEの上昇
自己株買いを行うと自己資本つまり企業の純資産の部が自己株買の分だけマイナス表示されます⇒つまり自己資本が減少するのです。
自己資本が減少すると当然バフェットが重要視しているROEは増加します。
ROE⤴ = 純利益→ ÷ 自己資本⤵
簡単にいうとROEは株主から預かった資本から如何に効率よく利益を上げているかということなので、当然効率よく利益を上げている企業の方が株価上昇が期待できますよねという指標です。
自社株買いの効果③:アナウンスメント効果
最後にアナウンスメント効果があります。
これは企業の経営者が自社の株がお得な水準だから、他の投資をするよりも投資妙味があると判断したと世間に知らしめる効果です。
かの有名なファンドマネージャーであるピーター・リンチ氏も言っているのですが、企業の社員や経営者こそが最も自社のことを熟知しているといっているのです。
例えば持ち株を行っている社員が多い会社は、内情を知っている社員が自社の株は安いと思っている証なので有望であるとも仰っています。
つまり、自分のことは自分が一番分かるというように、企業のことは企業内部の人が一番分かっており、その最たる経営者が自社の株は安いと思っていますよ市場に知らしめることが出来るのです。
その最たる例が2016年のソフトバンクの5000億円もの史上最大の自社株買いですね。孫正義社長が自社の株が最も魅力的だと判断したと明言しております。
自社株買い後の株の行方
自社株買をした株式は先程上で申し上げた通り、自己株として純資産の部で▲表示されますが、その後どのような運命をたどるのでしょうか。
消却
こちらは読んで字の如く消却ですね。つまり自己株を消滅させて、この世の中から自己株買した株を消し去ることですね。
この償却をして初めて、発行済株式数が減少します。つまり消却前と消却後で資本の部は以下のように変更となります。
<消却前>
発行済み株 500億円 (100億株)
自己株 ▲100億円 (▲20億株)
☟
<消却後>
発行済み株 400億円 (80億株)
経済的に何が違うの??と思われた方もいらっしゃると思いますが、経済的には何も変わりません。
然し、もう一つの選択肢が消えるというプラスの効果があります。
処分
もう一つは、自己株買いをして保有している自己株を再び売却して資金調達を行うことです。
一回買ったものを売るわけですから、市場に流通する株数は上昇して株価は希薄してしまいます。
つまり自己株買いを行う前の状況に戻ってしまうわけですね。
例えば、株価が500円の時自己株買を行い、その後株価が1000円まで上昇したら、保有している自己株を再び売却することにより、
企業は売却益を得ることが出来ますが、株主価値は減少してしまうのです。
自社株買いの例
それでは直近自社株買を行っている、サイゼリヤの事例について見てみましょう。
以下が2018年1月10日に自社株買いを発表したサイゼリヤの例なのですが、基本的には以下のようにプレスリリースで発表されます。
そしてこの時は決算と同時に発表されたのですが、決算が悪かったので株価は下落しました。
決算と同時に自社株買は発表される傾向が強いので、自社株買い発表単体の影響が株価にどれくらい織り込まれているのかは分かりにくいです。
ここで注意したいのは(2)取得する株式の総数や(3)株式の取得価格の総額が上限と記載されている点です。
つまり実際いくら買い付けるか分からないということですね。
更に上限まで購入したとしても発行済み株式全体の0.6%にしかならないので比較的小規模であることがわかります。
その為、決算のインパクトの方が断然大きかったということが読み取れます。そして実際の買い付け結果が以下になります。
総数、金額ともに上限の4割程度しか買い付けを行っていませんね。
前年度の自社株買いも上限額の5割程度しか行っていませんので特段サプライズでもなく株価は少し下げたくらいでした。
発表額に対してどれくらいの割合で自社株買を行うかを予め考慮に入れておく必要があります。
買い付け額も小さく、前例からも通知額に対して達成度が低いことが織り込まれていた為、自社株買の影響が少なかったのでしょう。
実際に今回の自社株買いの発表から完了の通知までの値動きが以下になります。
まとめ
自社株について纏めると以下のようになります。
【効果】
・EPSの上昇を伴って株価が上昇
・ROEの上昇により株価市場で評価
・自社株が安いよという経営者からのアナウンス
【注意点】
・自己株買いをした後に再び市場に出す可能性がある起業家
・自己株買いの規模が小さければインパクトが小さいとインパクトは小さい
・予告上限額に対して、どれくらい実施した実績があるか
株式を大きく保有し、経営陣に今回紹介した自社株買いのような株価上昇策を提言して能動的に株価を引き上げて好パフォーマンスを上げているファンドについてもランキング記事で紹介しておりますので参考にしてみて下さい!