人類は化学技術の発展と急速な人口増加によって地球温暖化は喫緊の課題として広く認識されています。
このまま気温が上昇した場合、専門家は「永久凍土が融解し、莫大な量のメタンが放出される」と警鐘を鳴らしています。
メタンはCO2の25倍の温室効果があり、人類が中級温暖化をコントロールできない状況に陥ると警告を鳴らしています。
そのため、世界は間近にせまる生存危機を打開するため「カーボンニュートラル」を目標に掲げています。
「カーボンニュートラル」とは企業や家庭から出る二酸化炭素等の温室効果ガスを減らし、森林による吸収分等と相殺して実質的な排出量をゼロにすることです。
そんなカーボンニュートラルを実現するべく活躍している企業に投資するイノベーティブ・カーボンニュートラル戦略ファンドを分析していきたいと思います。
以前、カーボンニュートラル関連で注目される水素に焦点を当てた投信も取り上げていますのでご覧ください。
→【投資信託:H2】地球環境への配慮が評判のグローバル水素株式ファンドを口コミを含めて徹底評価!
世界のカーボンニュートラルの動向とは?
まずは最近のカーボンニュートラルの動向についてみていきたいと思います。我々世代からすると古くは1997年の京都議定書に遡ることになるかと思います。
しかし、新興国には厳しい目標を課すことができず2015年のパリ協定まで時間が経過しました。
パリ協定では排出削減の合意をえることができましたが、達成義務を課すことができませんでした。
特に最大の排出国である中国ではパリ協定に署名したものの経済成長を優先し目標の達成に消極的な姿勢でした。
また、先進国側でもトランプ政権の誕生で2017年にパリ協定から離脱することとなり排出量上位2位がカーボンニュートラルに消極的という状況が続きました。
しかし、2020年になり風向きが変わりました。
中国が国連総会で2060年までのカーボンニュートラル達成を表明し、米国ではバイデン大統領が誕生しパリ協定に復帰することになりました。
CO2全体の排出量の95%を占める国がパリ協定に署名していることになります。
各国の取り組みは以下となります。
米国 | 2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロ |
日本 | 2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロ |
中国 | 2060年までにカーボンニュートラルを達成 |
EU | 2030年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で少なくとも55%削減し2050年までにカーボンニュートラルを達成 |
インド | 2070年までにカーボンニュートラルを達成 |
英国 | 2035年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で78%削減し2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロ |
カーボンニュートラルを達成するためには様々な技術開発や設備投資を行う必要があります。
カーボンニュートラル関係では以下の通り1.68京円の投資が見込まれています。1京円は100,000,000億円という途方も無い金額です。
電化およびインフラ | 3,479兆円 |
化石燃料関連 | 2,835兆円 |
エネルギー効率化 | 5,541兆円 |
再生可能エネルギー | 4,897兆円 |
合計 | 約1.68京円 |
つまり、今後大きな伸びしろが期待される産業ということですね。
イノベーティブ・カーボンニュートラル戦略ファンドの特徴とは?
それでは本題に移っていきたいと思います。
投資対象の3つのテーマとは?
イノベーティブ・カーボンニュートラル戦略ファンドでは以下の三つの投資テーマに投資すると宣言しています。
クローンエネルギー生成 | ✔︎風力発電 ✔︎エネルギー貯蔵 ✔︎太陽光発電 |
✔︎脱炭素化社会にい向けて各国政府や企業は再生可能エネルギーへの転換を早めており、市場の急拡大が予想されます ✔︎将来、最も発電量が増加すると期待される風力発電分野では、欧米企業を中心に技術確信が進んでいます |
交通・輸送の変革 | ✔︎EV(電気自動車) ✔︎再生可能ディーゼル ✔︎水素燃料電池 ✔︎高度な半導体 |
✔︎世界各刻では、ガソリン・ディーゼル車の新車販売禁止となる期限が近づいており、EVやFCVへの移行が加速することが予想されます。 ✔︎大きな動力を必要とする大型車両を中心に、水素燃料電池への需要は強く関連する企業への恩恵が期待されます |
産業用エネルギー展開 | ✔︎CO2回収・貯留 ✔︎グリーンビルディング |
✔︎脱炭素化の動きは、発電所や工場、ビル等、産業のあらゆる分野に波及しており関連する技術・製品は多岐にわたります ✔︎それらの中でも特にCO2削減に大きくい貢献する産業技術に着目 |
構成上位銘柄
2023年6月末時点での構成上位銘柄は以下となります。
2023年3月末時点からの構成上位銘柄の推移は以下となります。
2023年6月末 | 2023年3月末 | |
1 | クアンタ・サービシーズ | アナログ・デバイセズ |
2 | アナログ・デバイセズ | シュルンベルジェ |
3 | シュルンベルジェ | モノリシック・パワー・システムズ |
4 | フレックス | シェニエール・エナジー |
5 | ベーカー・ヒューズ | クアンタ・サービシーズ |
6 | モノリシック・パワー・システムズ | フリーポート・マクモラン |
7 | リンデ | アルベマール |
8 | フリーポート・マクモラン | フレックス |
9 | ソーラーエッジ・テクノロジー | ベーカー・ヒューズ |
10 | アルベマール | ソーラーエッジ・テクノロジー |
構成銘柄の80%近くが米国の銘柄で、次が日本で5%という状況となっています。ほとんど米国株投信といっても過言ではないですね。
米国のクリエネ特化銘柄ですから、当然FRBが利上げしているタイミングでは厳しい時を過ごすことになります。
為替ヘッジはなし
イノベーティブ・カーボンニュートラル戦略ファンドは為替へヘッジを行っていません。
つまりドル円が上昇すれば基準価額は上昇し、下落すれば基準価額は下落します。
米国株の比率が大きいのでドル円の動きが重要になってきます。
手数料
手数料は以下となります。
購入手数料:3.3%
信託手数料:年率1.925%
イノベーティブ・カーボンニュートラル戦略ファンドの運用実績
イノベーティブ・カーボンニュートラル戦略ファンドの運用実績は以下となります。基準価額は11,823円となっています。
1年半で約1.3倍になっていますが、先ほどお伝えしたとおりドル円の上昇に支えられた上昇です。
ドル円は115円から140円(一時152円)まで上昇しているので、この影響がほとんどで基準価額自体は上昇していません。
円建の全世界株式とS&P500指数と比較したものが以下となります。
青:イノベーティブ・カーボンニュートラル戦略ファンド
赤:eMAXIS Slim 全世界株式
緑:eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
掲示板での口コミや評判
掲示板での口コミは以下のように肯定的なものが多くなっています。ただ、ドル円上昇のおかげだと気づいている方は少なそうです。
口コミ①
カーボンニュートラルやはりその流れは止められないようだ
日本版は辞めたけど
ここは伸びが期待できる 日本はいつも遅い
天然ガスは温室効果ガスを出す量が少ないので、戦争の影響を懸念している声もあります。
口コミ②
戦争で完全にトーンダウン。
ニュートラルなんてロシアのガスありきの戦略だったからね。大人しく資源株にでも乗り換えた方がいい。
脱炭素はニュートラルからキャプチャーに転換する。
今後の見通しをマクロ面とミクロ面から考察
では今後の見通しについてみていきたいと思います。
マクロ面からはドル円も全世界的な株式市場も厳しい展開
まず、これまで上昇しているドル円は急激に反転しています。
今までは日米金利差が拡大するにつれてドル円も上昇してきました。
しかし、来年の景気後退が現実味を増すにつれて米国の金利が上昇し金利差が急激に縮小してドル円は134円まで急速に反転調整しました。
ただ、これはまだ序章です。本格的なリセッションになるとリーマンショックや2011年の東日本大震災のように急激な円高が進みます。
さらに日米でインフレ率が逆転しかかっています。インフレ率が逆転しそうになっているのに米国の10年債金利は4%近辺で、日本側は上限0.5%に日銀が押さえ込んでいます。
今のイールドカーブコントロールを撤廃するようなことになればドル円は130円を割り込んで120円に向かっていきます。
これまで基準価額を支えてきた為替が、今度は向かい風に転換するのです。
株式市場全体は厳しい展開がつづきカーボンニュートラル関連も不透明感が強い
株式市場は先ほどお伝えした通り、景気後退が現実味をますにつれて企業収益が減退するので厳しい展開となることが想定されています。
そして、カーボンニュートラル関連銘柄もいつ浮上するかは不明です。
このようなテーマ型投信は盛り上がる時は一気に上昇していきますが、盛り上がらないと長期低迷となる恐れがあります。
大前提として低金利政策が必要ですが、以下の通り米国が低金利に辿り着くには程遠いです。
動意付き始めてから数ヶ月の単位で短期的な上昇を狙って入るのが正しい活用方法です。
理由としては、動き出すまで時間がかかりますし、一旦ブームを終えたら暴落するからです。
つまり、全く長期投資には適していないのです。
長期で安定的なリターンが狙える投資先については以下でお伝えしていますのでご覧いただければと思います。
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