インドネシアの経済については前回、以下の記事でお伝えしています。
→ インドネシア経済の発展が著しい理由とは?産業構造や特徴を紐解き今後の見通しをわかりやすくお伝えする!
ポイント
- インドネシア株式市場は高い成長率に比して上昇幅は日経平均以下となっている
- しかし割安な水準ではない
- 金融政策上も追い風は期待できない
- 個別株はADRを用いて購入可能
本日はいよいよ本題ともいえるインドネシアの株式市場について、投資するのに魅力的な水準なのか?
魅力的な個別銘柄はあるのか?
という点を中心にしてお伝えしていきたいと思います。
インドネシアの株式市場は既に割高?
まずはインドネシアの株式市場全体の動きを見ていきましょう。以下はインドネシア版の日経平均ともいえるジャカルタ総合指数の値動きです。
10年間で4000ポイントから7000ポイントに上昇しています。
その間の日経平均と比較したものが以下となります。アベノミクスで堅調に推移した日経平均に劣後した動きとなっています。
また、新興国株の特徴ではありますが値動きに激しさは目立ちますね。2020年のコロナショックでは40%ほど下落をこうむっています。
ではインドネシア株は割安水準といえるのでしょうか?
結論を申し上げますと、インドネシアは以下の表をご覧いただければ分かる通り、若干割高目のPER水準となっています。
地域・国 | PER (株価収益率) |
PBR (株価純資産倍率) |
配当利回り | 時価総額 |
---|---|---|---|---|
インドネシア | 17.8 | 2.4 | 3.19% | 1280億ドル |
全世界 | 14.5 | 2.5 | 2.39% | 56.8兆ドル |
先進国 | 14.9 | 2.6 | 2.24% | 50.8兆ドル |
エマージング国 | 11.6 | 1.7 | 3.64% | 6兆ドル |
ヨーロッパ | 12.1 | 2 | 2.86% | 10兆ドル |
アジア・パシフィック | 11.7 | 1.4 | 2.97% | 6.8兆ドル |
BRICs | 11.7 | 1.7 | 2.9% | 3.6兆ドル |
日本 | 12.2 | 1.3 | 2.59% | 3.7兆ドル |
米国 | 17.1 | 4.2 | 1.51% | 36.5兆ドル |
中国 | 11.3 | 1.3 | 2.23% | 2.1兆ドル |
インド | 32 | 3.8 | 1.29% | 1.1兆ドル |
ブラジル | 5.9 | 1.7 | 10.33% | 4225億ドル |
イスラエル | 11.9 | 1.7 | 2.19% | 1259億ドル |
マレーシア | 14.5 | 1.5 | 4.16% | 1222億ドル |
折角であれば割安でなおかつ成長率が高い国に投資したいところですよね。
筆者が目をつけているのが中国です。国としての成長余力がまだまだ大きい上でPER11倍と異常に割安に放置されています。
→ 中国の株式市場への投資はおすすめできる?今後の見通しは?魅力的な個別銘柄やファンドを買い方も含めてわかりやすく解説!
何故、インドネシア経済は成長しているのに株価の伸びはイマイチなのか?
皆さん、経済は高成長しているのに株価の伸びがイマイチで、なおかつ割安ですらないということに疑問を持たれた方もいらっしゃると思います。
これは、所得が上昇したことによる購買力の上昇を先進国の企業に吸い取られていることに起因します。
所得が上昇すれば、日本の車や電気製品を購入しますし、スマホはAppleのiPhoneを購入しますし、検索はGoogleを用います。
つまり先進国の製品やサービスを使うので、先進国企業の収益の増加に寄与してしまうのです。
自国に高付加価値のある産業を育成できないかぎり経済成長の果実を自国の株式市場に還元することは難しいのです。
そのため新興国はGDPで世界全体の40%以上をしめるにも関わらず時価総額では10%程度となってしまっているのです。

参照:Vanguardを元に筆者作成
自国の成長を株式市場に反映できるのは自国に高付加価値製品やサービスがある国のみです。新興国でなかなか自国の高付加価値製品やサービスを生み出せる国は少ないです。
しかし、1つだけ例外となっている国があります。それが先ほどお伝えした中国です。
中国は米国の製品やサービスを遮断して、自国のハイテク産業を発展させアリババやテンセント、百度、Huaweiなどを育てあげています。
→ 躍進を続ける中国経済!崩壊が囁かれているが実態は?特徴と今後の見通しを含めてわかりやすく解説。
中国国民の消費が中国の産業に向かうことで今後株式市場が増大していくことが想定されます。
投資を行うのであれば、このように自国に強い産業が確立できている新興国の方が魅力的であると考えています。
現在は金融引き締めを行い株式市場に逆風が吹いている
株式市場において重要な決定要素となるポイントに金融政策があります。アベノミクスで日本株が上昇したのも、日銀が大規模緩和を実施したことに起因しています。
また、コロナショック以降米国株が大幅に上昇したのもFRBによる利下げと量的緩和拡大に踏み切ったことがきっかけとなりました。
一方、現在世界的にインフレが進み米国をはじめ先進諸国で金融引き締めの動きが活発化しているため世界的に株価が軟調に推移しています。
インドネシアは2019年から利下げを実施してきましたが、現在は世界的なインフレ抑制の流れをうけて政策金利が急激に上昇しています。
金融引き締めを実施している国の株価は軟調に推移します。インフレ率はいまだに5%を超えており、引き締めの出口はまだ見えません。
インドネシアの株式市場は2023年以降も厳しいと見通さざるを得ません。
インドネシア株に投資するにはインドネシアルピア円(IDRJPY)の為替リスクを負う
インドネシア株にかぎらず海外株に投資をするのであれば為替リスクを負うことになります。
特に新興国度合いが強い国ともなると為替レートの変動が激しくなります。
インドネシアの通貨はインドネシアルピアです。インドネシアルピア円のレートが上昇すれば円建のリターンは上昇し、下落すれば円建のリターンは下落します。
以下はインドネシアルピア円のチャートです。2021年の0.7から2022年には0.98と40%近く上昇しました。しかし直近大きく下落しています。
この動きはドル円と似たものがあります。動きはインドネシアルピア円の方が激しいですが。
インフレが上昇するなかでインドネシア中銀が利上げするなか、日本は金融緩和を継続しているので両国の金利差が拡大したことでインドネシアルピア円は急騰しました。
しかし、利上げにより景気悪化でインドネシア経済が腰折れし始め、日本のインフレ率が上昇したことで両国の金利差は縮小してインドネシアルピア円は下落に転じました。
ただ、この下落の動きはまだ序章です。
両国の金利差はさらに縮まっていく可能性が高く2021年の水準までインドネシアルピア円のレートが急落していく可能性が高くなっています。
現在投資をするとインドネシアルピア円の下落の影響が直撃することになる可能性があるので要注意です。
現在の水準から30%程度はインドネシアルピア円が下落すると想定すると最低でもインドネシアルピアベースで30%以上上昇する銘柄に投資をしていかなければいけません。
インドネシア株は楽天証券やSBI証券でADR制度を利用して購入が可能
インドネシアの証券取引所に上場されている銘柄を日本から購入するのは困難です。
そのため、ADRという仕組みを使って購入することになります。ADRは楽天証券やSBI証券といった大手ネット証券で購入可能です。
以下はインド株のADRの例となります。ADRは米国以外の国で設立された企業が発行した株式を裏づけとして米国で発行される有価証券です。
ADRは厳密には株式とは言えないのですが、裏づけとなる株式が存在するため株式を保有しているのと同じ効果を得ることが出来ます。
それではADRで投資できる銘柄で魅力的なものをお伝えしていきます。
インドネシアのおすすめ銘柄①:バンクマンデリ(BMRI)
かつての日本がそうであったように新興国において経済が発展する局面では、その心臓にあたる銀行の収益は増加していきます。
バンクマンデリはインドネシア最大の国営商業銀行です。インドネシアのメガバンクとして以下のとおり幅広くサービスを展開しています。
- 中小・零細企業向け融資
- 商業銀行
- 法人銀行
- トレジャリー
- インターナショナル・バンキング
- 消費者向け金融
まさにインドネシアの三菱UFJ銀行といったところですね。政府持ち株比率は60%をこえるため国有企業です。
バンクマンディリは以下の通り売上は右肩上がりを実現しています。純利益もようやく戻してきました。
2021 | 2020 | 2019 | 2018 | |
純金利収入 | 73,062,494 | 62,520,805 | 59,440,188 | 54,622,632 |
金利収入、銀行 | 97,749,086 | 95,616,227 | 91,525,090 | 80,992,570 |
総支払利息 | 24,686,592 | 33,095,422 | 32,084,902 | 26,369,938 |
貸し倒れ引当金 | 20,706,294 | 23,631,444 | 11,810,248 | 14,456,471 |
貸し倒れ引当金後の純利息収入 | 52,356,200 | 38,889,361 | 47,629,940 | 40,166,161 |
非金利収入、銀行 | 47,163,489 | 42,633,188 | 38,478,632 | 38,726,211 |
非金利支払、銀行 | -61,161,268 | -57,130,144 | -49,667,132 | -44,949,003 |
税金など調整前当期純利益 | 38,358,421 | 24,392,405 | 36,441,440 | 33,943,369 |
法人税繰り入れ額 | 7,807,324 | 5,993,477 | 7,985,848 | 8,091,432 |
税金など調整後当期純利益 | 30,551,097 | 18,398,928 | 28,455,592 | 25,851,937 |
少数株主持分 | -2,522,942 | -1,599,413 | -973,459 | -836,916 |
特別損益項目前当期純利益 | 28,028,155 | 16,799,515 | 27,482,133 | 25,015,021 |
当期純利益 | 28,028,155 | 16,799,515 | 27,482,133 | 25,015,021 |
利益特別項目を除いた | 28,028,155 | 16,799,515 | 27,482,133 | 25,015,021 |
希薄後当期純利益 | 28,028,155 | 16,799,515 | 27,482,133 | 25,015,021 |
期中平均株式 数 | 46,631 | 46,642 | 46,667 | 46,667 |
特別項目を除いた希薄EPS(一株当たり利益) | 601 | 360 | 589 | 536 |
DPS (利益配当株当たり)-普通株式株式の発行 | 361 | 220 | 353 | 241 |
希薄後のEPS(一株当たり利益) | 603 | 360 | 589 | 536 |
株価も上昇していますがPERは11倍台という割安水準となっています。政策金利の下落に歯止めがかかっているので業績の上昇が見込めるのもプラスの点です。産業PERが25倍となっている中で、まだまだ放置されている割安企業です。
インドネシアのおすすめ銘柄②:アストラ・インターナショナル(ASII)
インドネシアはASEASNの中で最大の自動車産業を抱えています。以下の赤色の部分ですが右肩上がりとなっていますね。
アストラインターナショナルはインドネシア最大の自動車企業です。自動車、二輪車、スペア部品の組み立てから販売を手がけています。
業績はコロナで凹んでいますが、現在回復している途中となっています。
株価はコロナショック以降しずんでいますが、ここから業績が立ち直るに連れて回復して高値を超えていくことが見込まれています。
2021 | 2020 | 2019 | 2018 | |
収益合計 | 233485000 | 175046000 | 237166000 | 239205000 |
収益 | 208723000 | 175046000 | 237166000 | 239205000 |
その他の収入(合計 | 24762000 | - | - | - |
収益コスト、合計 | 189484000 | 136488000 | 186927000 | 188436000 |
売上総利益 | 44001000 | 38558000 | 50239000 | 50769000 |
営業費用合計 | 206525000 | 162637000 | 210982000 | 212337000 |
販売費及び一般管理費費用計 | 16926000 | 24048000 | 22796000 | 22807000 |
減価償却費/償却費 | 12410000 | 1640000 | 1259000 | 1094000 |
支払利息(利益)-純営業活動 | -2271000 | - | - | - |
異常費用(利益) | 836000 | 461000 | - | - |
その他の営業費用 計 | -10024000 | - | - | - |
営業利益 | 26960000 | 12409000 | 26184000 | 26868000 |
営業外収益(費用)純額 | 6197000 | 7424000 | 4737000 | 5947000 |
資産売却益(損失 | 103000 | - | - | 229000 |
その他・ネット | -5493000 | 1908000 | 3133000 | 1951000 |
税引前当期純利益 | 32350000 | 21741000 | 34054000 | 34995000 |
法人税等調整額 | 6764000 | 3170000 | 7433000 | 7623000 |
税引後当期純利益 | 25586000 | 18571000 | 26621000 | 27372000 |
少数株主持分 | 43562000 | -2407000 | -4914000 | -5699000 |
特別損益前利益 | 20196000 | 16164000 | 21707000 | 21673000 |
当期純利益 | 20196000 | 16164000 | 21707000 | 21673000 |
特別損益を除く営業利益 | 20196000 | 16164000 | 21707000 | 21673000 |
希薄化後当期純利益 | 20196000 | 16164000 | 21707000 | 21673000 |
希薄化後平均株式数 | 40484 | 40484 | 40484 | 40484 |
特別損益を除く希薄化後1株当たり利益 | 498.86 | 399.27 | 536.19 | 535.35 |
DPS - 普通株式一時発行 | 239 | 114 | 214 | 214.13 |
希薄化後正規化EPS | 376.51 | 433.98 | 552.48 | 545.74 |
PERは8倍台と割安なのもお得なポイントですね。非常に割安に放置されています。自動車業界は日米ともに好調で、これから新興国にも波及していくはずです。
GMが発表した10-12月期の販売台数は前年同期比41%増の62万3261台。半導体へのアクセス改善が寄与した。高級車「キャデラック」ブランドの販売台数は同期に75%急増した。
インドネシアのおすすめ銘柄③: iシェアーズ MSCI インドネシア ETF (EIDO)
個別銘柄に投資をするのは難易度が高いという方におすすめなのがETFです。ETFは株式と同様に株式市場が開場している間に売買することができる投資信託です。
インドネシアのETFで最も有名なのがi シェアーズMSCIインドネシアETFです。EIDOという銘柄名です。
EIDOはMSCIインドネシア・インベスタブル・マーケット・インデックスの価格・収益実績に連動する投資成果をを目標とする浮動株調整後の時価総額加重指数です。
ただ、上記はあくまで外国人が投資をすることができる株式の時価総額加重平均でありジャカルタ総合指数とのパフォーマンスは全く別物となります。
他にもジャカルタ総合指数に連動しているETFや投資信託はないか探しましたが見当たりませんでした。
以下はEIDOとジャカルタ総合指数のチャートの比較です。
ジャカルタ総合指数に圧倒的に劣後しています。なかなか厳しいものがありますね。
以下は構成上位銘柄ですが大手銀行が上位を占めています。お堅いリターンを望むETFであることがわかります。
Ticker | Name | Sector | Asset Class | Market Value | Weight (%) | Notional Value | Shares | |
1 | BBCA | BANK CENTRAL ASIA | Financials | Equity | $92,638,739.16 | 19.64 | 92,638,739.16 | 158,577,290.00 |
2 | BBRI | BANK RAKYAT INDONESIA (PERSERO) | Financials | Equity | $59,644,516.13 | 12.65 | 59,644,516.13 | 187,001,254.00 |
3 | TLKM | TELEKOMUNIKASI INDONESIA | Communication | Equity | $32,928,971.84 | 6.98 | 32,928,971.84 | 126,390,390.00 |
4 | BMRI | BANK MANDIRI (PERSERO) | Financials | Equity | $28,344,453.79 | 6.01 | 28,344,453.79 | 42,530,960.00 |
5 | ASII | ASTRA INTERNATIONAL | Consumer Discretionary | Equity | $17,523,035.17 | 3.72 | 17,523,035.17 | 44,419,030.00 |
6 | BBNI | BANK NEGARA INDONESIA | Financials | Equity | $16,898,278.29 | 3.58 | 16,898,278.29 | 27,059,958.00 |
7 | KLBF | KALBE FARMA | Health Care | Equity | $12,115,542.68 | 2.57 | 12,115,542.68 | 82,766,385.00 |
8 | MDKA | MERDEKA COPPER GOLD | Materials | Equity | $11,313,716.49 | 2.4 | 11,313,716.49 | 36,234,306.00 |
9 | CPIN | CHAROEN POKPHAND INDONESIA | Consumer Staples | Equity | $10,924,138.70 | 2.32 | 10,924,138.70 | 27,929,225.00 |
10 | ADRO | ADARO ENERGY INDONESIA | Energy | Equity | $10,328,865.92 | 2.19 | 10,328,865.92 | 55,732,839.00 |
まとめ
今回のポイントをまとめると以下となります。
ポイント
- インドネシア株式市場は高い成長率に比して上昇幅は日経平均以下となっている
- しかし割安な水準ではない
- 金融政策上も追い風は期待できない
- 個別株はADRを用いて購入可能
- ジャカルタ総合指数に連動した成績をだすファンドは存在しない
以下では新興国で2023年から魅力的と考えられるファンドをランキング形式でお伝えしています。
2023年現在、妙味がある新興国は筆者は中国であると考えています。以下の記事を参考にしてほしいですが、実態に対して、あまりにも株価が割安で放置されており、どこかで卓越したリターンを狙えるタイミングがあると考えています。
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