私はこれまで、日本で投資すべきではなく、海外投資を選択すべきということを明言しておりますが、
「では、海外でもどこに投資すれば良いのか?」
という観点から一つ一つ、対象になり得る投資先を紹介していきたいと思います。
今回分析していくのはインドネシアです。
インドネシアの経済状況がどうなっているのか?
インドネシアの国としての今後の見通しはどうなっているのか?
という点を中心に紐解いていきます。
インドネシアの概要
まずは、インドネシアの一般概要をみていきましょう。
一般的事項
国・地域名 | インドネシア共和国 Republic of Indonesia |
---|---|
面積 | 191万931平方キロメートル(2022年、日本の5.1倍) |
人口 | 2億7,020万人(2021年、出所:中央統計局、推計値) |
首都 | ジャカルタ 人口1,056万人(2016年、出所:中央統計局) |
言語 | インドネシア語 |
宗教 | イスラム教、ヒンドゥー教、キリスト教ほか |
引用:JETRO
インドネシア経済概要
2021年 | |
実質GDP成長率 | 3.7(%) |
名目GDP総額 | 1,112(10億ドル) |
一人当たりの名目GDP | 4,350(ドル) |
消費者物価上昇率 | 1.9(%) |
(備考:消費者物価上昇率) | 期中平均値 |
失業率 | 6.5(%) |
輸出額 | 231,522(100万ドル) |
対日輸出額 | 17,855(100万ドル) |
輸入額 | 196,190(100万ドル) |
対日輸入額 | 14,644(100万ドル) |
経常収支(国際収支ベース) | 3,326(100万ドル) |
貿易収支(国際収支ベース、財) | 43,806(100万ドル) |
金融収支(国際収支ベース) | 11,670(100万ドル) |
直接投資受入額 | 31,093(100万ドル) |
外貨準備高 | 144,905(100万ドル) |
対外債務残高 | 415,065(100万ドル) |
政策金利 | 3.5(%) |
(備考:政策金利) | 期末値、7日物リバースレポ金利 |
対米ドル為替レート | 14,345(ルピア) |
(備考:対米ドル為替レート) | 期中平均値 |
引用:JETRO
インドネシアの今後の経済成長を考察
次にインドネシアの経済成長率をみていきましょう。
引用:World Economic Outlook Databaseを元に筆者が作成
毎年5%程度のGDP成長率であり安定していますね。成長率としては、ASEANの平均レベルです。
以下をご覧いただければわかる通り筆者の投資している中国と比べると勢いは弱いという点は残念ですね。
→ 躍進を続ける中国経済!崩壊が囁かれているが実態は?特徴と今後の見通しを含めてわかりやすく解説。
今後の動向を考察していきましょう。
インドネシアの人口からみる経済成長の可能性
まずは国の今後の経済成長を見る上で重要な指標である、人口ピラミッドです。
「15歳以上〜65歳未満」の労働人口が増加していくかがポイントです。
理想的なプラミッドを描いており、若年層の労働人口が増加し続けることが読み取れます。まさに人口ボーナスがこれから始まるところです。
インドネシアの人口は2065年まで増え続け、総人口数は3億2千万人に達し消費も拡大していくでしょう。
現状は一人当たりGDPは4700USDと、中所得国の罠である10,000USDまでは依然として距離があり、まだまだ発展していくでしょう。
しかし、あと10年の間に中所得国の罠にぶち当たる可能性は十分にあります。
現在の機械などの「組み立て」を中心とする労働集約型産業からの脱却をインドネシア政府は図っていく必要があります。
労働人口も数は魅力的ですが、「労働の質」という観点では若干の懸念点があります。その理由は、教育水準の低さです。
インドネシアの中学生の学力レベルは世界的に下から数えた方が早く、
今後の経済発展を支える質の高い労働力を実現するための教育が施されているかは疑問です。
例えば、日本が急速な経済発展を成し遂げたのも人口ボーナスも大きく寄与しましたが日本の根本的な「教育の質の高さ」も大きく影響しました。
米国・マッカーサーも日本の子供の基礎学力の高さに驚き、将来日本は大きな経済発展を果たすと発言したと言われています。
江戸時代から伝わる論語と算盤の寺子屋教育、明治政府の教育勅語が功を奏したのでしょう。
インドネシアの産業構造を解く
インドネシアの産業構造といえばあなたは何が大きな割合を占めると思いますか?
以下のグラフでみてみましょう。
予想に反してバランスのとれた産業構造になっているのが分かります。総合商社でいえば三菱商事のようなバランスの取れた配分です。
次にGDPを産業ではなく、消費、投資(総資本固定)、純輸出という軸で分けてみます。
左側のグラフの青い部分を見て欲しいのですが、投資の大きさが気になります。インドネシアは投資に依存した経済と言えますね。
インドネシアの経済成長への寄与という意味で、堅調な消費の伸びは良い傾向ですが、それでも投資の寄与率はかなり高めであるといえます。
因みに、日本や米国では個人消費が70%~80%で投資は10-15%というレベルです。大きな差が感じられますよね。
インドネシアの輸出入の構造と問題点
インドネシアは中国、日本、米国にバランスよく輸出をおこなっています。
ただ、輸出製品は農産品、鉱業製品、パーム油、ゴム製品と低付加価値ものばかりとなります。
現在、安い労働力を背景として発展しているわけで、今後労働単価が上がった時に、中国のように経済を発展させていけるかが懸念点となります。
また、輸入に関しては以下の通り中国からが4分の1を占めています。そして輸入産品は機械・輸送機械や製造製品となります。
つまりインドネシアは原料を輸出して高付加価値製品を日本や中国から受け入れているという状況です。
慢性的な経常収支が通貨価値を毀損する恐れあり
インドネシアは経常収支の大赤字が継続しています。
内容をみると所得収支が大きな要因となっています。
所得収支は財務省によって以下のように説明されています。
第一次所得収支 対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支状況を示す。
(第一次所得収支の主な項目)
直接投資収益:親会社と子会社との間の配当金・利子等の受取・支払
証券投資収益:株式配当金及び債券利子の受取・支払
その他投資収益:貸付・借入、預金等に係る利子の受取・支払第二次所得収支 居住者と非居住者との間の対価を伴わない資産の提供に係る収支状況を示す。
官民の無償資金協力、寄付、贈与の受払等を計上する。
参照:財務省
つまり、インドネシアに投資をしている先進諸国に対して配当金や利息を支払っているということですね。
投資を受け入れることは経済発展には繋がるのですが、自国から資金が流出するというデメリットも存在しているのです。
経常収支のマイナスの意味を考えてみましょう。
インドネシアに投資した先進国の企業や国にインドネシアルピー建の配当や利息を支払います。
受け取った先進国は自国通貨に両替するために、インドネシアルピーを売却して円やドルに変換します。
つまり、インドネシアルピー相場としては常に下押し圧力がかかっているということを意味します。
実際、インドネシアルピア円相場は以下の通り下落基調を継続しています。
インドネシアの株式に投資する場合は当然、インドネシアルピア建となるのでインドネシアルピアが下落すると投資リターンも悪くなるので注意が必要です。
財政収支はまだまだ健全
財政状況が悪い国は積極的な投資ができないので経済成長が鈍化するおそれがあります。また通貨価値も毀損していしまいます。
インドネシアは政府の財政支出はまだまだ低く30%台しかありません。懸念するべき水準ではないでしょう。
また、直近2021年は財政が健全化していることが伝えられており、懸念する必要はなさそうです。
インドネシアのスリ・ムルヤニ・インドラワティ財務相は3日の記者会見で、2021年の財政赤字が国内総生産(GDP)比で4.65%となり、当初予想より大幅に少なかったと発表した。商品価格高騰と内需拡大を背景に歳入が増加したと指摘した。
参照:インドネシア
政治はジョコ大統領が長期政権を確立している
新興国の経済発展にとって政治の安定性は非常に重要になります。
中国は習近平国家首席、インドはモディ首相と安定政権が経済成長の礎を築いています。
インドネシアではジョコ大統領が2019年に再選されて与党連合が過半数を確保しています。
2024年までは政権が安定的に推移するため、経済にとっては大きなプラスですね。
まとめ
インドネシアの経済、財政、政治についてみてきました。まとめると以下となります。
ポイント
- インドネシアは高成長ではあるが中国やインドと比べると低い成長率
- 人口ピラミッドは綺麗で、なおかつ一人当たりGDPは低いことから成長余地は大きい
- 現在は原料を輸出して高付加価値製品を輸入する構造となっている
- 賃金が上がった時に高付加価値産業を育てて経済成長を中国のように持続できるかが鍵
- 経常収支の赤字が通貨に対しては下落ち圧力になっている
- 財政上は新興国の中でも債務は少なく安定している
- 政治はジョコ大統領のもと安定政権が2024年まで継続するのが確実
次回はいよいよ本題のインドネシア株式市場に投資するのは魅力的な選択肢なのかという観点を紐解いていきたいと思います。