前回の記事では、インド株式投資をするにあたって押さえておくべき経済状況、財政状況、政治状況についてお伝えしてきました。
成長著しいインドを徹底解剖!なぜ経済は高成長を継続しているのか?政治や財政面も含めて今後の見通しをお伝えする。
今回はインド株式市場は魅力的なのか?
投資するならどののような方法がよいのか?
インド以上によりよい選択肢はあるのか?
という点を中心としてお伝えしていきたいと思います。
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【2023年版】インド株式に投資するおすすめの投資信託やファンドをランキング形式で紹介!
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インドのファンダメンタルズ(経済・財政・政治)の復習
前回の記事の要点だけ復習をしていきたいと思います。
→ 成長著しいインドを徹底解剖!なぜ経済は高成長を継続しているのか?政治や財政面も含めて今後の見通しをお伝えする。
ポイント
- 人口は14億人(2022年時点)と、大国中国に次ぐ二位であり、労働人口数、総人口が今後も増え続け、2060年時点で17億5000万人となることが予想されている。
- 理想的な人口ピラミッドの形であり今後の経済発展のポテンシャルが高い。
- 全体としての教育水準はまだまだ低い実態がありますが、富裕層の子息は確りと教育されている。
- かつてはイギリスの植民地であったことから、英語を公用語とし、欧米の外資系ともパートナーシップを組みやすい点がある。
- 産業別GDPは不動産・金融・その他のサービス業が中心となっており、経済成長に寄与している。
- 民間消費=個人の消費が拡大しており、内需の拡大による経済成長をしている。
- 新興国にしてはまだまだ総固定資本形成比率が低い。
- 税をうまく国民から徴収できておらず若干財政には不安がある
- 経常収支はプラスに転じている
- 政治は長期安定政権であるモディ首相のもと非常に安定している
特筆すべきは経済成長率の一貫した高さですね。インドは新興国の中でも安定して高成長を成し遂げています。
さらに1人あたりGDPは、まだ中国の5分の1程度と今後の伸び代も十分にあります。
更に人口も今後中国を抜いて第一位に躍り出ることが確実になってきています。
個人消費も活発で、モディ政権は安定政権を築いており、財政状態が若干悪い点を除けば死角がありません。
財政状態も法律などを整備すれば、しっかりと税金を徴収することができるようになるので改善が期待されています。
では、このように誰の目から見ても魅力的なインドの株式市場は投資妙味があるのでしょうか?
この点を重点において紐解いていきたいと思います。
インドの株式市場は投資対象とすでに割高感がある
インドの経済は解説すべきことが多いので、本題の株式市場の話に漸く辿り着きました。インドの株式市場・国立証券取引所は1992年に設立されました。国立証券取引所の他に、ボンベイ証券取引所もあります。
国立証券取引所の株式時価総額は2兆ドルを超えており、アジアでは2022年時点で香港に次ぐ第3位の規模感です。
既に韓国より大きな株式市場を有しているのは驚きですね。そして上昇率が非常に高いことが見て取れます。
インド版の日経平均であるSENSEX指数をみていきましょう。
SENSEX指数とは、インド株式市場の代表的な株価指数です。ムンバイにあるインド共和国最大のボンベイ証券取引所(Bombay Stock Exchange)に上場する銘柄のうち、流動性、取引規模、業種などを代表する30銘柄で構成される時価総額加重平均指数で、「BSE SENSEX(S&P Bombay Stock Exchange Sensitive Index)」や「SENSEX30」とも呼ばれます。1979年4月3日を基準日とし、その日の時価総額を基準値100として算出されます。
銘柄選定には企業規模だけでなく浮動株の時価総額なども勘案され、比較的頻繁に銘柄が入れ替えられます。業種では金融と情報通信の比重が大きく、財閥系の企業が多いのが特徴です。参照:SMBC日興証券
30銘柄と比較的少ない構成ですが、インドを代表する大型銘柄が時価総額に応じて組み入れられています。
2022年時点でインド株式に投資するかどうかですが、
PER/PBR
- PER:22.5倍
- PBR:2.5倍
となっており、正直に言ってしまうと新興国にしては割高です。15倍程度が割安と言われる水準ですからね。すでに投資タイミングとしては遅いです。
インドはわかりやすく今後の経済成長が見込まれるので、それだけ投資参入する人が多いということです。
それでもインド株に投資する手法としては、指数連動型ETF、若しくは投資信託と、個別株にADRという仕組みを使って投資する手法があります。
また、インドには以前私もETFで投資していましたが、インド株式指数と上場投信の連動率は低くあまりおすすめできたものではありません。
上昇率の6-7割程度しか取れませんでした。
個別株に投資する場合はインドの個別株は当局が規制しており日本から直接取引することはできずADRという制度を利用する必要があります。
インド株式をインドの銀行に預け、リターンとしてアメリカの銀行が証券を出す制度をADR(=American Deposit Receipt)と言います。
この仕組みを楽天証券などで間に米国市場を介在させることで取引は可能となります。(往復取引手数料は4%)
ADRで取引できるおすすめのインド個別銘柄とは?
では楽天証券やSBI証券で取引できるADRを紹介していきたいと思います。
HDFCバンク
銀行というのは経済の心臓です。新興国の経済成長に乗ろうとするなら銀行に投資をしておくのが無難な選択肢といえます。
HDFCはインドを拠点とする民間銀行で規模も大きく、日本でイメージすると三菱UFJ銀行といったところです。
株価も以下の通り多少上下しながらも基本的には右肩あがりを実現しています。
業績も以下の通り、2019より売上、純利益ともに右肩あがりに上昇しています。
決算期 | 売上高 | 経常益 | 最終益 | 修正1株益 | 1株配 | 発表日 |
2018.03 | 843,465 | 277,106 | 178,514 | 68.29 | ー | 2018/7/25 |
2019.03 | 595,348 | 339,959 | 220,565 | 243.93 | ー | 2019/7/31 |
2020.03 | 674,124 | 365,844 | 260,269 | 141.81 | ー | 2020/7/31 |
2021.03 | 782,428 | 439,826 | 325,977 | 177.06 | 6.5 | 2021/7/28 |
2022.03 | 892,434 | 519,162 | 386,000 | 208.14 | 15.5 | 2022/7/29 |
前期比 | 14.1 | 18 | 18.4 | 17.6 | (%) |
割安度を示すPERも比較的割安で放置されています。新興国の成長企業にしては低い水準ですね。
インフォシステクノロジー
インフォシステクノロジーは名前から想像できる通り、インドのハイテク企業です。
インドのITの力を詰め込んだ総合企業で、IT以外にも手を出し現在ではコングロマリッド化しています。
金融サービス及び保険の企業、製造業の企業、小売・消費者製品・物流の企業、エネルギー、公益事業、資源及びサービスの企業、コミュニケーション、テレコムOEM及びメディアの企業、ハイテクの企業、ライフサイエンス及びヘルスケアの企業、及び他のすべてのセグメントが含まれる。コアサービスには、アプリケーション管理サービス、独自のアプリケーション開発サービス、独立した検証ソリューション、製品エンジニアリングと管理、インフラストラクチャ管理サービス、従来のエンタープライズアプリケーションの実装、及びサポートと統合サービスが含まれる。製品とプラットフォームには、「Finacle」、「Panaya」、「Skava」、「LEAP」が含まれる。
株価はコロナ後の大相場で上昇したものの現状は世界的なハイテク株に対する調整の影響もあり下落しています。
しかし、将来的に上方向に行く角度が高いので紹介させていただきます。
以下は業績推移ですが売上が綺麗に右肩あがりですね。純利益がもう少し追随してほしいところではあります。
決算期 | 売上高 | 営業益 | 経常益 | 最終益 | 修正1株益 | 1株配 | 発表日 |
2018.03 | 10,939 | 2,659 | 3,143 | 2,486 | 0.55 | ー | 2018/7/19 |
2019.03 | 11,799 | 2,696 | 3,003 | 2,200 | 0.51 | ー | 2019/4/17 |
2020.03 | 12,780 | 2,724 | 3,095 | 2,338 | 0.55 | 0.26 | 2020/5/29 |
2021.03 | 13,561 | 3,325 | 3,596 | 2,623 | 0.61 | ー | 2021/4/20 |
2022.03 | 16,311 | 3,755 | 4,036 | 2,968 | 0.7 | 0.41 | 2022/6/17 |
前期比 | 20.3 | 12.9 | 12.2 | 13.2 | 14.8 | (%) |
PERも新興国のハイテク企業にしては割安といえる水準まで下落してきています。
決算期 | 2020年3月 | 2021年3月 | 2022年3月 | 2023年3月予 | 2024年3月予 |
EV/EBITDA(倍)(解説) | 10.129 | 20.015 | 23.881 | 17.731 | 15.358 |
ROE(%)(解説) | 25.96 | 27.3 | 29.11 | 32.13 | 32.79 |
PER(倍)(解説) | 14.93 | 30.46 | 35.3 | 26.71 | 23.14 |
PBR(倍)(解説) | 4.02 | 7.6 | 10.49 | 8.58 | 7.59 |
配当利回り(%)(解説) | 2.49 | 1.61 | 1.36 | 2.22 | 2.78 |
インド株式市場の見通しとよりよい選択肢とは?
インドという国自体は非常に魅力的であることに疑いの余地はありません。しかし、株式市場が魅力的であるかという観点でみると別の結果となります。誰もが魅力的と考えた結果、既に割高となっているのです。
また、インドは国民の所得水準が低く、国民が本格的に自国の株を買うフェーズには突入していません。
日本のバブルを思い返してみてください。日本がある程度豊かになってきて国民が日本株を購入したから、バブルに突入していきました。
インドはまだ株式投資をするには貧しい国なのです。そして、規制のせいでADR以外では投資できず海外資本の流入もあまり期待できません。
つまり、日本のバブル期突入前の経済水準で、なおかつ成長力が高い国に投資をすることが最もリターンが見込める新興国株式投資ということになります。
そして、現在、上記の観点で最も魅力的な国としてあげられるのが中国です。中国に投資というと今更?と思われる方もいると思います。
しかし、多くの人がそのように感じているからこそ、見落としてしまっている中国投資のチャンスがあります。
以下では筆者が実際に投資している中国のファンドを含めて魅力的な銘柄をお伝えしていますのでご覧いただければと思います。
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