私が大学時代に東大の経済学部の授業に「オルタナティブ投資の有用性」という授業がありました。
この授業の享受は、伝説のファンドであるLTCM出身(コラム参照)の高橋教授という方によりなされていました。
当時はあまりしっくりこなかったのですが、今になってみると凄い授業でした。
今日は、このオルタナティブ投資というものがどういう特徴のもので何故有用なのかという点について説明していきたいと思います。
オルタナティブ投資とは何か?
オルタナティブとは英語ではalternativeという単語で代替的なという意味です。
つまりオルタナティブ投資というのは代替的な投資という意味ですね。
何が代替的なのかというと、伝統的な投資法に比べて代替的なという意味です。
では伝統的なとはなんでしょうか??
それは株式と債券のことを指します。
つまり、株式や債券以外の代替的な投資先という意味でオルタナティブ投資というワードが出来上がったのです。
オルタナティブ投資の意義
ではそもそも何故オルタナティブ投資の必要性が出てきたかというと、株式市場や債券市場ばかりに投資していると、相場が不調な時はもろに資産価格が下落してしまいます。
その為、相場が下落基調の時のショックを和らげる、又は収益を獲得する為には、株式市場や債券市場と違う動きをする資産を組み入れる必要があるのです。
その為、ハーバード大学の基金等の海外有名大学基金、日本の生命保険会社等もポートフォリオに一定割合オルタナティブ投資を組み入れているのです。
後にハーバード大学の例を用いて説明しますが、オルタナティブ投資を組み入れることによって、リスク分散がなされ高いパフォーマンスを実現することができるのです。
オルタナティブ投資の種類
それではオルタナティブ投資の構成要素毎に見ていきましょう。
ヘッジファンド
これはこのブログでも頻繁に取り上げている投資先ですね。
ヘッジファンドは欧米の富裕層や大学の基金がこぞって投資をしているファンドで、投資信託のような証券会社で購入できる公募ファンドではなく、
一般には募集されていない私募ファンドとなります。
→ 私募ファンド(プライベートファンド)と公募ファンドの違いについてわかりやすく解説する
またヘジファンドの特徴として市場環境でも収益を目指す絶対収益型のファンドです。
ヘッジファンド指数は市場平均に対して優秀な成績を収めています。
リターンは米国株と長期てみると同等ですが、値動きが安定しており暴落を免れているという点でヘッジファンドの方が安定投資には適しています。
ヘッジファンドの中には株を売りから参入する空売りを行ったり、レバレッジを掛けた運用を行ったり、
株式以外の為替やオプションなどのデリバティブといわれる金融派生商品に投資するものもあります。
その為、伝統的な株式投資や債券投資とは異なるリターンを齎すことになるのです。
因みに私が投資している日本のヘッジファンド(BMキャピタル)では、資産運用に適した運用を行う為に、空売りやレバレッジ、金融派生商品といったリスクの高い商品には投資しておりません。
そのファンドではバフェットの師であるベンジャミン・グレアムのバリュー株投資を行い、市場平均に連動せず尚且つ下落リスクが低くどのような相場環境でも収益の獲得を狙っていています。
何も奇をてらった方法でなくても、市場平均とは異なる成績を出すことが出来るのです。
関連:ベンジャミン・グレアムの投資対象『ネットネット株』を分かり易く解説
日本人でも投資をすることができるヘッジファンドについてランキング形式でお伝えしていますので参考にしていただければと思います。
プライベート・エクイティ ・ファンド (PE ファンド)
前回説明したPEファンドですね。
プライベート・エクイティー(PE)ファンドをわかりやすく説明する~ヘッジファンドと何が違うのか~
これもれっきとしたオルタナティブ投資です。PEファンドは未公開株に投資をして、経営にがっつりと入り込み企業価値を上昇させた後に、
他の企業に売却するか上場した段階で売却して大きな利益を得る手法です。
プライベート・エクイティー・ファンドは未公開株に投資をし市場要因ではなく経営に入りこむことにより能動的に企業価値をあげるので、市場平均とは異なる動きをするのです。
実際日銀の資料によりますと、PEファンドは市場平均はいわずもがな、ヘッジファンドする上回るリターンを挙げております。
PEファンドというと、成長企業に投資を行い上場後に売却を行うベンチャーキャピタルと混同されがちなところはありますが、
寧ろ既存の成熟企業の一部門を独立させ事業を成長させた後に売却させたり、不採算事業の経営をV字回復させるターンアラウンド型の総称であるバイアウト型が主流となっています。
商品 (金・プラチナ・原油)
商品市況というのは株式市場との連動率は低いです。
例えば、金ですが為替の円と共にリスク回避資産と呼ばれ、株式市場が下落するような事象が発生すると反対に金は買われます。
また原油も独特の要因、例えばOPECの総会で供給制限が決まったり、原油掘削上が停止したりすると価格があがりますし、シェールガスの生産量が多くなると供給力が高くなり価格が下がります。
ヘッジファンドやPEファンドの違いとしては、2015年の原油価格が半額未満となった例があります通り、
価格変動幅が大きく資産を失うときは大きく失う可能性があるという点も重要な要素となります。
不動産投資
非常に伝統的な手法のように思われますが、株式市場とは異なる動きをするということもありオルタナティブ投資の一種として分類されています。
以下は日本の高度経済成長期と地価上昇の経過ですが、1960年から1990年の間に株式市場は概ね上昇していきましたが、
下落する局面も何度もありましたが不動産価格はオイルショックの時期を除いて一貫して上昇していますね。
著しく発展している新興国においては、不動産は世界の経済環境にかかわらず上昇していきます。
現在の日本では景気に敏感に反応する不動産市場となっているので安易にJ-REITや米国REITを購入するというのは控えた方がよいでしょう。
以下東証REIT指数とTOPIXの値動きですが、非常に連動性が高いと言わざるを得ませんね。
ハーバード大学の例
先程、ハーバード大学等の大学の基金もオルタナティブ投資をポートフォリオの資産に組み入れていると申し上げましたが、それではどれくらいの割合をオルタナティブ投資として組み入れているのでしょうか?
以下がハーバード大学の基金の例なのですが、このうち未公開株、ヘッジファンド、不動産、Commodityと実に約70%ものオルタナティブ投資を組み入れているのです。
中でも一際大きなポジションとなっているのがPEファンドとヘッジファンドですね。
ハーバード大学の基金は平均して9.5%の運用利回りをだしております。
米国の代表的な株式指数であるS&P 500指数が5.5%ですので、市場平均を大きく上回り運用利回りを上げ続けているのです。
LTCMってなに?
私が冒頭でオルタナティブ投資をまなんだきっかけとなった高橋教授の出身がLTCMであると述べましたが、LTCMについて少し書いていきたいと思います。
LTCMというのはLong-Term Capital Managementの略で、高度な金融工学を用いて設立当初から驚異的な成績をあげ、
FRBの副議長デビッド・マリンズやブラック・ショールズ方程式を纏めたマイロン・ショールズが取締役に入っていたことでドリーム・チームと言われていたヘッジファンドです。
最初の1994年から1998年までの5年間で赤のダウ・ジョーンズが2倍、米国債が1.3倍に上昇するなかで4倍に上昇しています。
LTCMは最初は単純な割安な債券を買い、割高な債券を売るという単純な手法で運用していましたが、
次第に金利スワップや仕組み債券、モーゲージ担保証券等デリバティブを組み入れた不確実性の高い商品を大きく組み入れていったのです。
残念ながらその後アジア通貨危機は短期間で収束するとの検討が外れてしまい、それに応じた巨額のリスクの高いポジションをとっていたため一気に破綻してしまったのです。
東大は、このようなファンド出身の人を招き入れたり、私の卒業後ではありますが金融学科も新設され少しでも日本の金融を切り開こうという意図がありますね。
然し、この教訓からわかることは長く続くヘッジファンドというのは危険な商品には手をださず、
年50%といった派手な利回りを追求するのではなく安定した運用で年10%の利回りを追求した方がよいということですね。
オルタナティブ投資のまとめ
オルタナティブ投資は伝統的な株や債券以外に投資する手法で、これら伝統的な資産とは異なる動きをする為、
相場下落時に損失を最小化更には収益の確保が目指せるようになる。
実際にハーバードの基金のような市場平均に対して非常によいパフォーマンスを残しているようなファンドでも、
ポートフォリオの半分以上もの割合をオルタナティブ投資に振り向けることによって優秀な成績を残している。