AI関連ファンドに投資できるグローバルAIファンドなど、様々なテーマ株投信が日本には存在します。
たしかにAI関連も今の時代ホットなテーマではあります。
しかし、丁度日本でも普及し始めている5G関連銘柄も今話題の投資先として魅力を増しています。
5Gを中心として次世代の通信関連の企業に投資する投資信託として「次世代通信関連・世界株式戦略ファンド」が人気を誇っています。
名前が長いので以降は愛称として親しまれている「THE 5G」とすることとします。今回はそんな「THE 5G」について紐解いていきたいと思います。
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投資信託「THE 5G」の特徴とは?
それではまずは「THE 5G」の特徴について見ていきたいと思います。
Next Generation Connectivity Fund JPY Unhedged Classに投資
「THE 5G」を販売しているのは三井住友トラストアセットですが、実際にニューバーガー・バーマン・グループが運用するNext Generation Connectivity Fund JPY Unhedged Classに投資をしています。
つまり運用はニューバーガー・バーマン・グループが担っているということですね。ニューバーガー・バーマン・グループについての説明は以下となります。
- 1939年創業の資産運用会社で、米国ニューヨークに本社を置き、世界の運用拠点にて約660名の運用担当者 が、世界中の機関投資家や個人投資家向けに、様々な資産運用サービスを提供しています。
- 運用総資産残高は約3,568億米ドル(約38兆円)、従業員数は約2,300名を有する独立系の資産運用会社です。
参照:請求目論見書
日本では類を見ないレベルの巨大な資産を運用している投資信託ということができますね。
投資しているのは5G関連銘柄
「THE 5G」は5G関連銘柄に投資をしていきます。
5Gが普及することであらゆるモノがインターネットにつながるIoTが実現していきます。
IoTは現在433兆円の市場規模となっていますが、2025年までに1,336兆円の市場規模となることが見込まれています。
一言にIoTといっても以下のように様々な分野が存在しています。
小売 | 139.2兆円 |
作業現場 | 111.6兆円 |
都市 | 199.2兆円 |
家 | 42.0兆円 |
工場 | 444.0兆円 |
オフィス | 18.0兆円 |
ウェアラブル | 190.8兆円 |
車・その他 | 190.8兆円 |
合計 | 1,336兆円 |
参照:SMBC
世界第3位のGDPを誇る日本のGDPが約600兆円であることを考えると、如何に潜在性の高い市場であることが分かりますね。
「THE 5G」構成国は米国と中国で70%を占める
2022年2月末のTHE 5Gの構成上位国は以下の通りですが、米国と中国だけで全体の7割を占めています。
構成国 | 比率 | |
1 | 米国 | 63.31% |
2 | 中国 | 8.01% |
3 | 日本 | 7.45% |
4 | 台湾 | 7.19% |
5 | オランダ | 3.57% |
6 | 韓国 | 3.17% |
7 | フィンランド | 2.93% |
8 | スペイン | 0.98% |
2021年2月末における構成国は以下でした。1年で米国の比重がさらに上がり、中国からは抜けていることがわかります。日本はさらに比率は下がっており、米国への集中が進んでいます。
構成国 | 比率 |
米国 | 59.96% |
中国 | 12.13% |
日本 | 5.49% |
台湾 | 4.85% |
韓国 | 3.13% |
スペイン | 2.89% |
スウェーデン | 2.55% |
英国 | 2.23% |
シンガポール | 1.88% |
フィンランド | 0.99% |
「THE 5G」の構成上位銘柄
THE 5Gの構成銘柄は48銘柄となっています。2022年2月末時点でのトップ10銘柄は以下となっています。
なんと全て業種は情報技術です。米国AMD、サービスナウなどクラウド企業などが入っています。半導体が上位を占めていますね。かなり集中的なポートフォリオなので当たればデカイのかもしれません。
銘柄 | 国名 | 業種 | 産業分野 | 構成比率 | 概要 | |
1 | アドバンスト・マイクロ・デバイセズ | 米国 | 情報技術 | 通信インフラ関連 | 4.07% | 米国の半導体メーカーで、CPU(演算処理半導体)や GPU(画像処理半導体)に強みを有する企業。 |
2 | モノリシック・パワー・システムズ | 米国 | 情報技術 | 通信インフラ関連 | 3.81% | 米国の半導体メーカーで、電子機器の電流を制御する アナログ・パワー半導体に強みを有している。 |
3 | マーベル・テクノロジー | 米国 | 情報技術 | 通信インフラ関連 | 3.73% | 米国の半導体メーカー。通信基地局やデータセンター向 けの半導体に強みを有する。 |
4 | ハンヂョウ・シーラン・マイクロエレクトロニクス | 中国 | 情報技術 | IoT機器・装置 関連 |
3.72% | パワー半導体を手掛ける中国企業。電機機器や産業用 機器における電力の制御、供給を担う製品を手掛ける。 |
5 | ASMインターナショナル | オランダ | 情報技術 | IoT機器・装置 関連 |
3.57% | オランダの半導体製造装置メーカー。半導体ウエハー 上に回路の素材となる膜を形成する成膜装置に強みを 有する。 |
6 | ハブスポット | 米国 | 情報技術 | 通信インフラ関連 | 3.48% | オンラインマーケティングに必要なソフトウェアを手掛け る。中小事業者向け製品に強みを有する。 |
7 | アドバンテスト | 日本 | 情報技術 | IoT機器・装置 関連 |
3.46% | 半導体テスタのメーカーで、同分野において高い市場 シェアを有しており、5Gの普及や社会のIoT化にとって次 世代の半導体は必要不可欠な存在。 |
8 | ビル・コム・ホールディングス | 米国 | 情報技術 | 通信インフラ関連 | 3.46% | クラウドベース財務処理ソフトウェアを提供する米国企 業。主に中小事業者向けの製品を手掛ける。 |
9 | サービスナウ | 米国 | 情報技術 | 通信インフラ関連 | 3.38% | クラウドを通じて業務支援ソフトウェアを提供するプラット フォームに強みを有する。業務支援ソフトウェアの分野 におけるグローバルリーダー。 |
10 | キーサイト・テクノロジーズ | 米国 | 情報技術 | 通信インフラ関連 | 3.34% | 世界中の通信関連企業を顧客に持つ電子計測機器 メーカー。ネットワークの通信状況を計測するテスト機器 に強み。 |
以下は2021年2月末時点の上位10銘柄となっています。一位に中国のECのJD .com、電子部品の日本企業である村田製作所が上位にいましたが、内容が様変わりしています。アクティブファンドはやはり、相場の状況に応じて迅速に動きますね。
銘柄 国名 産業分野 |
概要 | 構成比率 |
JDドットコム 中国 通信サービス |
独自の物流システムを整備している中国版アマゾン | 3.67% |
キーサイト テクノロジーズ 米国 通信インフラ |
世界中の通信関連企業を顧客に持つ電子計測機器メーカー | 3.63% |
村田製作所 日本 IoT機器 |
電子部品企業。MLCCや無線通信用の電子部品に強みを有する | 3.43% |
ゼンデスク 米国 通信サービス関連 |
自動応答やチャットシステムなどカスタマーサポート関連のソフトウェアをクラウドベースで提供 | 3.37% |
TモバイルUS 米国 通信関連サービス |
ワイヤレス通信プロバイダー。米国全国規模の携帯電話事業者の大手 | 3.09% |
バンドワイズ 米国 通信関連サービス |
インターネットを介した音声通話サービスを提供する米国企業 | 3.09% |
アナログ・デバイセズ 米国 IoT機器 |
アナログおよびデジタル信号処理用集積回路の設計、製造、販売会社。 | 3.06% |
ツーシックス 米国 通信インフラ関連 |
光学部品や半導体の材料となるウエハーを提供する米国の電子部品メーカー | 2.92% |
アドバンスト マイクロ・デバイセズ 米国 通信インフラ関連 |
米国の半導体メーカーでCPUやGPUに強みを有する企業 | 2.91% |
セルネックステレコム スペイン 通信インフラ関連 |
通信キャルアやメディア企業を主な顧客として5万基以上の通信タワーを運営するスペインの企業 | 2.89% |
10銘柄で約40%を占めておりましたが、2022年は36%となっています。分散が進んでいます。
米国の金融引き締めで、相場リスクは高まっていますからね。
手数料はアクティブ型投資信託の中でも高い水準
最初にお伝えしている通り、Next Generation Connectivity Fund JPY Unhedged Classに投資をしているためニューバーガー・バーマン・グループへの手数料と三井住友アセットへの手数料が発生します。
つまり以下の通り手数料は非常に高い水準となります。
- 購入手数料:3.3%(税込)
- 信託手数料:年率1.188%(税込)
「THE 5G」の運用実績を紐解く
それでは肝心の「THE 5G」の運用実績についてお伝えしていきたいと思います。
コロナショック後に急速に基準価格を伸ばす
肝心な成績ですが、コロナショック後に2倍になりました。
しかし、2022年初頭の株式相場の下落でかなり利益を吐き出してしまっています。
データとしてみると以下となります。標準偏差というのは投資におけるリスク指標となっています。
年 | 1年 | 3年(年率) |
トータルリターン | -7.98% | 15.93% |
カテゴリー | 6.91% | 12.42% |
+/- カテゴリー | -14.89% | 3.51% |
ファンド数 | 314本 | 223本 |
標準偏差 | 24.35 | 20.81 |
カテゴリー | 16.09 | 19.44 |
+/- カテゴリー | 8.26 | 1.37 |
ファンド数 | 314本 | 223本 |
シャープレシオ | -0.33 | 0.77 |
カテゴリー | 0.61 | 0.66 |
+/- カテゴリー | -0.94 | 0.11 |
ファンド数 | 314本 | 223本 |
ここ1年のトータルリターンは-7.98%と厳しい成績となっています。3年で見ると15.93%となっていますが、これは歴史上最大規模の金融緩和による追い風が原因であることは容易に想像できます。
つまり、本当の実力は測れず、もう少し様子を見たい金融商品ですね。
代表株価指数をアンダーパフォーム
以下はTHE 5Gと代表株価指数の比較です。常にインデックスをアンダーパフォームしてしまっています。
アクティブファンドの目標はインデックス投信を超えるリターンとなりますが、ここ3年は常に指数を下回ってしまっています。
ハイバリュエーションと金利高で今後の見通しは厳しい
以下は直近6ヶ月のTHE 5Gと代表株価指数の比較チャートです。
直近6ヶ月で見ると株価指数もろとも大きく下落しています。
これは今まで金融緩和により株価が上昇を続けたことで、各株式銘柄のバリュエーションが高くなっていることが要因です。
株価が高くなっているグロース株は金利が上昇すると、将来の利益の割引現在が低くなるので企業価値が減少します。
結果的に株価が下落するということになります。気になる長期金利ですがコロナショックを経て上昇が本格化しています。
経済再開期待が高まり金利が上昇することが想定されていますので、今後グロース株市場は厳しい環境が続くことが想定されます。
すると、ハイテク銘柄中心のTHE 5Gも苦しい環境が続くとみるのが妥当でしょう。
まとめ
「THE 5G」について纏めたものは以下となります。
- 5G関連の銘柄に投資
- Next Generation Connectivity Fund JPY Unhedged Classに投資している
- 組入銘柄は米国のハイテク銘柄中心
- 高いリターンだがナスダック総合指数に劣後
- 今後の金利高で大きく下落する可能性があり現時点での投資は危険
長期的に資産を形成するために適したファンドについて以下でお伝えしていますので参考にしていただければと思います。